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身体はさまざまな姿勢をとり、そのときにはアゴの位置も変わります。姿勢が変われば必然的に噛む位置も微妙に変わってきます。広い歯並びであれば余裕がありますが、狭い歯並びでは余裕がありません。身体が要求している位置が場面場面で違うのに、それを許されないということは、身体としてはつらいことになります。まさに動きを制限されている、どこで噛んだらよいのかわからないという感じを受けます。身体は常にひとつのポイントを中心に揺らいでおり、下顎もそれに呼応してゆるい角度の中で揺らいでいます。狭い谷の中でしか動けないと、身体の揺らぎを吸収することが難しくなります。下顎は重錘(バランサー)としての機能を持っています。この中心となるポイントが、年齢と共に姿勢が変わることで、噛み合わせがゆっくりと変わってくることが老化としての噛み合わせの変化です。(ですから時間と共に咬合が変わって行くのはある意味当然なことです。)噛み合わせが短期間に急激に変わったり、大きく逸脱した変化があるとそれは病気の予兆であったり、もちろん発病すれば明らかに変わりますし、その変化特有の身体の変調があったサインです。日常の中の小さな揺れは生理的なものとして考え、大きな急激な変化は病的なものとして捉えるのが正しいでしょう。本来の広い運動域があれば身体の揺れがあってもそれを難なく吸収できます。抜歯した歯列は、型を採ってみると明らかなのですが、抜歯をしていない歯列に比べると子供のように小さな歯列です。同じ大きさのビンであっても、口の広いビンを口を下にして逆さに立たせたときと、狭い口のビンを逆さに立てた場合を比べれば、狭い口のビンを逆さにしたときに、非常にビンの安定が悪いのは直感的にも明らかです。車でも、左右のタイヤの幅が狭い軽自動車と、左右のタイヤの幅が広い大型自動車の安定感が全く比べ物にならないくらい違うことと同じです。足の平をぴったり閉じて立ったときと、広げて立ったときの上体の安定度の違いと同じです。幅と奥行きのある歯列がいかに大切であるかがわかると思います。力学的に、長径も小さく、幅も小さい歯並びは不安定な噛み合わせになりやすいのです。歯並びの大きさはアゴの位置の安定度と関係を持つと考えられ、惹いては顎関節症との関連が考えられます。また、舌の入る空間の大きさも小さくなってしまいます。舌は軟組織で、歯列の中に納まっているのですが、歯列が小さくなると舌の収まる空間に余裕がなくなります。良いことではありません。それというのも抜歯をして隙間を作るときにはデジタルの計算方法だからということがあります。抜くと一気に14mmの隙間ができますが、それより少ない隙間にはなれないのです。5mmくらいでよいのにつまりアナログ的隙間の作り方ができないところに大きな問題が生じるのです。
顎関節症の人の訴えのなかに毎日毎日歯が舌のほうへ倒れこんでくるということを言う人がかなりあります。常識で考えるとそんなに簡単に歯が倒れてくるということはありえません。それに毎日だなんて変だ、と思います。知らない人が聞いたら、この人頭が変なのではないかと思ってしまいます。しかし、実はこれはアゴの位置が毎日ずれていると考えればそのとおりなのです。朝と昼、夜で、アゴの位置が違っているのです。アゴと舌はくっついているようでくっついていません。アゴがずれて、いつものところにいる残された舌が押されて、(本人の感覚としてはアゴがずれたとはわかりませんから)歯が、のしかかってきたと感じてしまうのです。皆さんが考える以上にアゴの位置は変わりやすいものです。それを制限するのが歯列の幅であり奥行きです。そしてそれぞれの歯の、山と谷です。でも一番大事なのはアゴがずれるような身体の傾きが問題です。顎はバランサーですので、身体が傾けば顎の位置が変わります。顎は身体で一番先っぽにあります。頭のてっぺんが先っぽではなく、実はアゴが一番先っぽです。頭蓋骨から吊り下げられた顎が体の中で腰から一番遠い位置にあり、そのため身体のバランスを取れる器官でありその役割があるのです。そのバランスをとる役割をさせるべき顎を常に噛み合わせている癖のある人がいるのですが、(上下の歯をいつも当てている人)、それでは、アゴによるバランスが取れなくなってしまいます。常に噛んでいる人のバランスはどこで取るのでしょうか。それは頭です。頭の位置を変えること、通常は背中が後ろに行き、頭が前に行く、すなわち猫背になっていく変化が多い。ですから普段は、歯を噛み合わせていてはいけません。
また、バランスをとる以外にも歯周病の面からも、歯列の変化の面からも常に歯を噛み合わせていることはいけません.歯が噛み合うのは食べるときだけにしたほうが身体の健康には良いのです。そして歯の持ちもいいのです。唇は閉めていなければなりません。しかし、歯は噛み当てていてはいけないのです。以上のようなメカニズムで、噛み合わせたときのアゴの位置は変化します。もうひとつ、アゴの位置が変わる原因としては、噛み締めている癖が原因で、または噛み方の癖が原因で、歯が動いてしまい、噛み合わせの位置が少しずつ移動してしまう場合です。そして最後に、歯医者さんで合わない詰め物、かぶせ物をしたときでしょう。これは高い詰め物かぶせ物だけではなく、当たらないつめ物、かぶせ物をしたときも問題です。普通高いことはすぐわかりますが、低いことはわかりません。そこが歯医者さんの腕なのです。
歯軋りをして山と谷がなくなって平らな噛む面になってしまった歯列の人はアゴの位置が非常に変わりやすく、いいことではありません。 |