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矯正の雑学とその他もろもろ

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カリエールモーションは大臼歯の遠心移動の新しい方法です。犬歯から後方の歯が、一塊として後方へ移動するため、移動後の治療期間の短縮が可能になります。 2017年10月

今月の話題はカリエールモーションです。

カリエールモーションはスペインの矯正歯科医ルイス・カリエールが開発した犬歯から第一小臼歯、第二小臼歯、第一大臼歯までの4本を一塊として後方へ移動する方法です。上顎の犬歯から第一大臼歯にブリッジを装着し、下顎の歯列全体をアンカーとして矯正用ゴムを上顎犬歯から下顎第一大臼歯にかけ、上顎の4本を一塊として後方へ引きます。

ゴムの力は片側8オンスかけます。かなり大きな力になるため下顎のアンカーは歯列全体を覆うマウスピースを使います。マウスピースがないままにゴムをかけると下顎第一大臼歯のみが前方へ傾斜移動してしまいます。マウスピースを併用することで副作用を打ち消します。ほんの少しのゴムの劣化も避けるため、一日に2回、多い時は3回新しいゴムに取り換えます。一日22時間以上の装着が必要です。

上顎第一大臼歯に装着したブリッジの後方部分にはボールジョイントが組み込まれており、第一大臼歯の主に後方回転、さらに後方への多少の傾斜を可能にする仕組みになっています。このことにより、第一大臼歯の近心回転が是正され、大臼歯の噛み合わせがよい噛み合わせに自動的に改善するように設計されています。通常上顎の第一大臼歯は生理的には後方から前方へ移動し、また口蓋根を軸として前方へ近心回転移動します。この経年的な移動を元に戻すことにより、本来あったであろう位置に上顎第一大臼歯を戻し、適正な大臼歯関係を回復することができます。

大臼歯の位置が適正になると、それより前方にあった歯が後方へ戻れる空隙が生まれ、前歯部の咬合関係にも改善の余地が生まれます。従来第一大臼歯の後方移動は非常に難しい治療で、方法も限られたものでしたが、さらにもう一つ可能性のある方法が追加されたことになります。さらに大臼歯のみならず、犬歯から後方の歯が、一塊として後方へ移動するため、移動後の治療期間の短縮が可能になりました。従来の第一大臼歯、第二大臼歯の後方移動では大臼歯の移動後の、残った第二小臼歯までの10本の歯の移動にかなり神経を使う移動様式を必要としましたが、犬歯までの移動が終わっているため、割合と単純な動きですみます。

インビザライン矯正においてもカリエールモーションとの併用は治療内容の可能性を広げ、さらにマウスピースの枚数の減少と治療期間の短縮が可能となります。ゴムさえ確実に付けていると高い確率で大臼歯の整直と位置の是正が実現します。アンカースクリューと併用することも可能です。


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ベンハムのコマを回すと、白と黒の光の点滅を見ているだけなのに、赤、黄、紫などの色が見えます。この色は視細胞で見ているのではなく脳で感じている色です。 2017年9月

今月の話題はベンハムのコマです。

ベンハムのコマとはドイツの物理学者フェヒナーが発見した現象をイギリスのベンハムがおもちゃとして開発、販売したものです。白黒の模様のコマを回すことで、赤、黄、紫などの色が見えます。色の見える詳しい理由はわかっていません。

人間の網膜には赤、青、緑の光を感じる視細胞(捍体細胞;明暗を感じる、錐体細胞;色を感じる、赤、緑、青)があり、光の刺激を受けてパルスを発生し、脳の後頭葉視覚野で色として認識します。3色以外の色では、たとえば黄色は赤と緑の視細胞が反応して黄色に見え、空色は緑と青の視細胞が反応して空色を感じます。赤、青、緑のすべての視細胞が反応すると白、均等に少し反応すると灰色、光がないと、すべての視細胞は反応しないので、黒に見えます。

マゼンタは赤と、青の視細胞です。太陽の光の中にはすべての色が含まれていますが、ベンハムのコマは、トンネル内のオレンジの色などのような単色のみの光の中でも緑がかったり、赤、紫が見えます。このことからベンハムのコマの色は単なる光の反射で見えるのではないといわれています。通常の緑の視細胞が反応して、緑を感じたり、青の視細胞が反応して、青を感じているのではなく、色は脳で感じており、光の刺激は目から入りますが、色の認識は視細胞の反応ではなく、脳の視床より内部で感じているとされています。ベンハムのコマが回っているのを見ているとき、目は単に白と黒の光の点滅を見ているのみです。

視細胞には光の点滅の間隔と長さのみの入力です。ベンハムのコマの色の感じ方は人により異なり、同一ではありません。年齢による違いもあります。回転数、白黒のパターン、その割合と場所を変えることにより二つの色が入れ換わったりすることも観察されています。回転を逆にすると色の順序は逆になります。

クラシカルなベンハムのコマの模様では写真には写りませんでしたが、その後の様々な研究により、白黒のパターンによっては写真にも写ることがわかりました。太陽光の下では写らなかったものも、蛍光灯の下では写ることがあることもあり、また蛍光灯下では写る色も変わることがわかっています。

コマの模様では、単なる白黒の交互の現れでは色は現れませんでした。白と黒の割合が異なる必要がありました。赤と緑は補色(足すと白になる)の関係にあり、青に対して補色は黄です。色の補色関係も発現に関連があるようでした 。ベンハムのコマの色の発現は、白から黒、黒から白へのパターンが変わるときに、目が刺激されてパルスを発生させますが、そのパルス発生の時間に、目の疲労による時間差がおこり、その時間差による光の干渉が、白でもなく黒でもない干渉信号として脳に届き、色として認識されるようであると考える人もいます。


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ヘビ毒はもとは消化酵素なので、噛まれると筋肉の壊死が起こり、運動障害などの後遺症が残ることもあります。 2017年8月

今月の話題はヘビの歯です。

ヘビ類の歯は円錐系の単純歯性で構成されています。 ボア類などでは下顎に1列、上顎に2列の歯列弓です。上顎の外側の歯列弓は上顎骨に支持され、内側の歯列弓は口蓋骨と翼状骨によって支持されています。すべての歯は口の奥に向かって傾いています。

初めは不連続性を持たない規則的な歯列でしたが、進化の過程で次第に、
ア)前から後方に行くにつれ大きさを減らす(前歯性、ボアなど)。
イ)すべての歯が同等。
ウ)前から後方へ次第に大きさが増す(後歯性、マムシ、ヤマカガシなど)、など変化していきました。

その後極端に大きな牙が現れます。牙は前歯異形歯性では上顎骨の最前部、後異形歯性では上顎骨の最後部に現れました。上顎骨は前方は前前頭骨との連接点、後方は外翼状骨との連接点で、頭蓋と連接しており、この支持点に牙は生えます。ドクヘビ類では毒牙は溝が最初は側面にありましたが、次第に正面に変わっていきます。溝のふちが近接するようになり、やがて両端を除き接着するようになります。管状になることで効率よく毒を作用させることができます。

コブラやサンゴヘビは前歯性であり、マムシ類、ガラガラヘビ類は後歯性です。牙が発達するにつれ毒牙以外の上顎骨歯は消滅していき、上顎骨も短くなりました。後歯性の系統のヘビ類は牙が後方にあるため、攻撃に不利であり、さらに後方では大きな牙は邪魔です。これを解消するため、後歯性のヘビでは口を開くと可動性のある口蓋が筋肉の作用で、前方へ引っ張り出され、外翼状骨も前方へ移動します。後ろ向きの牙のある上顎骨は前前頭骨と関節構造になっており、外翼状骨の前方移動で上顎骨は90度前方へ回転し、牙は垂直になり、かみつき易くなります。

堅固な上顎骨−前前頭骨支点を、前牙類は直接、後牙類は口蓋を移動させて支点としています。毒牙の発達と同じく筋系も変化し、唾液腺(耳下腺)が袋になり、周りに分泌細胞を配置します。筋線維が腺の後方を内包し、かみつくと急激に袋を収縮させて毒液を噴出させます。威嚇のため2m近く毒を飛ばすヘビもいます。 ヘビの毒は出血毒と神経毒に分かれます。マムシ、ヤマカガシ、などは出血毒、コブラ、ハブは神経毒です。同じ出血毒のマムシ、ヤマカガシでも、ヤマカガシは血液凝固作用(プロトロンビンの活性)であり、フィブリノーゲンが減少し、血小板は後で減少します。血栓ができ、急性腎不全を起こします。マムシの毒は血小板を減少させ、皮下出血、消化管出血、呼吸不全、心不全を起こします。ヘビ毒はもとは消化酵素なので、筋肉の壊死が起こり、運動障害などの後遺症が残ることもあります。


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原因不明の歯の痛み、口腔内の不快感、べとべとする、かみ合わせが変、口臭がするなどは、初期のうつ病の身体症状として出ている場合があります。うつ病は対処が早い方が治りやすいといわれています。 2017年7月

今月の話題はPIPC(Psychiatry In Primary Care プライマリケアにおける精神医学)です。精神疾患や精神的な問題をかかえる患者さんに対して苦手意識を持つ身体科医に対する精神疾患診療のプログラムです。

1998年以降、日本の年間自殺死亡者の数は急激に増加し、10年連続で3万人を超えました。自殺未遂者数はその10倍の30万人以上と推測されています。自殺率は世界101か国中第9位。人口10万人に対してアメリカ11人に対して日本24人です。死因の第6位になっています。不景気との関係が指摘されています。

こうした自殺の背景にはストレスに関連したうつ病があり、自殺者の30〜60%がうつ病にり患していたとの報告もあります。うつ病の生涯有病率はアメリカ16%、男性は10人に1人、女性は5人に1人の確率で生涯に1度はうつ病にかかるとされています。日本でもうつ病の生涯罹患率は8%と言われています。

うつ病患者さんは、口腔内に症状を発症する率も高く、原因不明の歯の痛み、口腔内の不快感、べとべとする、かみ合わせが変、口臭がするなど、最初に歯科にかかる事も多く、精神科や心療内科を受診する率はまれで、歯科を含めた身体科医を受診することが90%以上と言われています。しかしこれらの患者さん方のうち、うつ病、あるいはうつ状態と診断されるのは25%程度であり、歯科ではほとんど見逃されています。

うつ病はその多くが初期には身体症状を訴えとしていることが多く、自分自身もうつ病であることを自覚していません。うつ病は早く診断されればされるほど予後がよいことが知られています。軽症うつの状態で、適切な対処を行うことが日本の自殺者数の低下につながると考えられています。

うつ病に多い身体症状の一つは睡眠障害です。睡眠導入剤の安易な服用はよくありません。耐性や常用量依存を招きます。うつ病にも効果はありません。

うつ病によくある症状として、睡眠障害、食欲低下、体重減少、全身倦怠感があります。症状が多彩である、単一の病因では説明が困難、必要な検査を行っても症状を説明できる異常が認められない、身体疾患に対する治療を行っても自覚症状の改善が認められない、冠動脈疾患、脳血管疾患、がんなどの疾患にり患している、などの場合や、突然受診行動が変化したり、身体疾患では説明のつかない検査所見の変化があったり、あるいは過去に自律神経失調症、更年期障害、心身症などの既往がある場合、うつ病になりやすい背景を持つ、コミュニティーでの評価なども診断資料とします。炎症性疾患、甲状腺疾患、副腎疾患、鉄欠乏性貧血、栄養障害、電解質異常などの身体疾患の場合ももちろんありますので鑑別が必要です。


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コロネクトミーは知歯の抜歯の際の神経損傷を避けるために考案されました。まだ、知られていませんが、画期的な方法です。 2017年6月

今月の話題はコロネクトミーです。

下顎第3大臼歯の抜歯の術後偶発症として下唇の知覚鈍痲があります。これは知歯の埋伏位置が下顎の神経(下歯槽神経)に近く、抜歯時に神経末端を損傷することにより起こります。下唇知覚麻痺の頻度は一過性で0.4%〜11.5%、永続性では0.1%〜1.05%と報告されています。神経の枝部分の走行状態によるため、予測は困難です。

こうした偶発症を防ぐためコロネクトミーが考案されました。歯冠周囲炎を起こす原因となる歯冠部のみを除去し、下歯槽神経に接する歯根部分のみ下顎骨内にそのまま残しておきます。歯冠部のみ除去した後、切断歯髄面は薬剤などによる被覆はせずに歯肉骨膜弁で被覆し、閉鎖します。切断した歯髄は壊死することなく第3象牙質で覆われていたと報告されています。適応症としては
@下歯槽管が第3大臼歯根尖を迂回している。
A下顎管が第3大臼歯根尖で狭窄している。
B第3大臼歯根尖の歯槽硬線が下顎管の付近で消失している。
C第3大臼歯根尖付近で近傍の透過性が亢進している。
D第3大臼歯根付近で近傍の透過性が亢進している。
E第3大臼歯歯根の狭窄と下歯槽管との重なりがある。
F第3大臼歯歯根の湾曲がある。
等です。
歯科用CTで確認することで概ねの状態は把握できます。処置後の典型的経過としては
@約3カ月後に残根の前方移動が見られる。
A残根は新生骨により完全に被覆される。
Bそのまま変化なく経緯する。
残根が骨におおわれなかったのは2%と報告されています。残根は術後3カ月で1.84mm、1年で2.88mm、2年で3.41mm、3年で3.51mm前方へ移動します。

術後疼痛については通常抜歯より、有意に強いといわれています。鎮痛剤で対応します。開放創になった場合は残根の前方移動を確認後抜歯します。第2大臼歯の後方ポケットに残根が萌出してくることもあります。この場合も残根の抜歯が適応となります。歯肉縁下からの萌出が起こることもあります。下顎管からの離脱を確認したのち抜歯します。

従来残根を残すとそこから感染症を起こすといわれ、必ず完全に抜歯することが推奨されてきました。しかし、現在までのところ重篤な炎症や、のう胞の経過をとった例はないと報告されています。2回に分けて抜歯する方法や、牽引してから抜歯する方法などもありますが、コロネクトミーの方が受け入れやすいと目されています。コロネクトミーで残根を後で抜く率は5%弱であり、侵襲も少ないことから問題にはならないと考えられています。まだ保険には導入されておらず、自費になることが、普及を妨げていると考えられています。

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右利きの人の言語活動では左半球に強い活動が見られます。左利きの人の言語活動では脳の使い方が3種類あります。 2017年5月

今月の話題はfMRI(ファンクショナルMRI)です。

fMRIはMRIを利用して脳や脊髄の活動に関した血流動態を視覚化する方法です。脳が活動するときには、微細な静脈中の赤血球の脱酸化ヘモグロビン濃度が減少します。これをMRI信号としてとらえます。
詳しく書きますと、脳が活動すると酸素を消費する。すると微細静脈赤血球中の脱酸化ヘモグロビンの濃度が増えるように思いますが、それは一時的なものにすぎません。酸素を消費することは、赤血球中の酸素化ヘモグロビンが細胞に取り込まれ、酸素を細胞内に残し、脱酸素化ヘモグロビンとして静脈血管内に排出されることです。酸素が消費されると酸欠状態を回避するため血流量が増加し、静脈血管内の酸素化ヘモグロビンの濃度が増します。細胞で消費される酸素量はわずかなのに、供給される酸素化ヘモグロビンの量は血流とともに増大し、供給過多となって、消費されなかった赤血球の酸素化ヘモグロビンが静脈に流れ込んでいきます。すると静脈中の脱酸素化ヘモグロビンの数は相対的に減少します。こうして脱酸素化ヘモグロビンの、濃度が低下します。脳が活動する→静脈および毛細血管における赤血球中の脱酸素化ヘモグロビンの濃度が減少することになります。(Bold効果)

脱酸素化ヘモグロビンは常磁性体で、外部磁場と同じ方向へ磁化される性質があります。一方、酸素化ヘモグロビンは反磁性体で、外部磁場と反対方向へ磁化されます。脱酸素化ヘモグロビン濃度が減少すると磁場のゆがみが軽減されるのでMRI信号強度が上昇します。すなわち脱酸素化ヘモグロビンの濃度が減少すると水素原子の磁気共鳴信号が上昇し脳の活動状態が測定できます。

ひとつの精神活動を行うと、特定の脳の一部分が強く活動します。その結果、その部分の脱酸素化ヘモグロビンの濃度が減少し、MRIはそれを脳の画像として表示します。人の顔を見て名前をいうときなど、精神的なこころの動きにより脳が活動するとき、どのように脳が活動したかを測定するには、人を見るという入力、名前を言うという出力のためなど、名前を思い出す以外の脳の活動が加わり、純粋に名前を思い出すという心の働きによって脳のどこが活動したのかがわかりません。そのため、入力や出力のない純粋課題をおこなうことで、脳の活動を測定します。
欧米ではFの付く言葉を言う課題を与えます。日本では<は>の付く言葉を言うなどで検査したり、しりとりを行ったりします。しりとりをしているときの信号から何もしていないときの信号を引き算することで、しりとりしているときの活動を求めます。
右利きの人のしりとり課題では左半球の前頭葉に強い活動が見られます。左利きの人の言語活動ではその70%は右利きの人と同じく主に左半球が活動するといわれています。残りの30%は主に右半球が活動していたり、左右両方の半球が活動していることが分かっています。左利きの人の脳の言語活動には3種類あります。


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ポジトロン断層撮影(PET)は、1cm以下のがんの検出に最も有効といわれています。 2017年4月

今月の話題は近年の画像検査法です。

一つめは核磁気共鳴画像法(MRI)です。MRIは被験者に高周波の磁場を与え、人体の水素原子に共鳴現象を起こさせて、反応する信号を検出し、画像化するシステムです。水分の多い脳や血管などを診断することができます。物質を構成する原子核には原子核スピンにより磁石の性質をもつものがあり、通常はバラバラな向きにあるためお互いにキャンセルされ、磁化されていません。外部から強い静磁場をかけると核スピンの磁化は磁場をかけた向きに変わり、全体として同一方向へ弱く磁化されます。これに特定のラジオ波を照射すると核磁化は静磁場方向を軸として歳差運動を行います。(コマの首振り運動と似たもの)パルスの照射を止めると徐々にもとの状態に戻ります。この戻る速さに組織による違いがあり、この違いを画像化します。

利点としてはX線を用いないため被ばくがない。画像のコントラストがCTより高い。造影剤を用いなくても血管画像が得られる。骨によるアーチファクトが少ない。骨に囲まれたトルコ鞍や脳底の病変が解りやすい。軟骨や靭帯の評価ができる。脳梗塞超急性期では早期に病変がわかる。

欠点としては強力な磁場の力学的作用、騒音、検査時間が長時間になる、心臓ペースメーカーなどの金属が体内にあるとできない。接合プレート、ボルトがあると画像が乱れます。磁気カードなどは読み取れなくなる。マスカラ、アイラインなどの化粧品の中には磁性体を含むものがあり、検査により熱傷を起こすことがある。カラーコンタクトレンズや入れ墨、貼付薬にも磁性体を含むものがあり、熱傷を起こすことがある。費用が高く大掛かりな設備が必要になる。

もう一つはPET(ポジトロン断層撮影)です。PETは陽電子検出を利用した断層撮影技術です。主に中枢神経系の代謝レベルを観察するのに用います。近年では、がんの診断に多く利用されます。CTでは外部からX線を照射して全体を観察しますが、PETでは生体内部の放射線トレーサーを観察します。CT画像は形態画像であるのに対してPETは機能画像と呼ばれます。

がんの多くは、増殖スピードが速いため、ブドウ糖代謝が盛んなことを利用します。(ワールブルク効果)放射線を出す検査薬(ブドウ糖に似た糖に放射線物質を結合させたもの)を注射し、取り込み具合によって部位の機能を判別します。胃がん、大腸がん、肝細胞がん、脳腫瘍のように正常細胞もブドウ糖代謝が盛んな臓器では感度が下がります。肺がんのうち細気管支肺胞上皮がんでは検出しにくいといわれています。甲状腺がん、肺がん、食道がん、子宮癌、卵巣がん、転移した肝臓がん、悪性リンパ腫の発見に有効といわれています。近年はCTと組み合わせたPET-CTが使われ始めました。1cm以下のがんの検出には最も有効といわれています。


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小児の視力は基本遠視です。成長するにつれ眼軸長が伸び、正視眼になります。 2017年3月

今月の話題は近視です。

目は水晶体と網膜で構成されます。網膜に焦点が合うように水晶体には小さな筋肉(毛様体筋)がついており、レンズの厚みを調整して焦点調整を行います。近くのものを見るときはレンズの厚みを厚くすることで凸レンズにし、網膜に焦点を合わせます。調整力を働かせないで、遠方から来た光(平行光線)が網膜に焦点が合う状態を正視眼といいます。調節力を働かせないで見たときに、焦点が網膜の前方にあるものを近視、後方にあるものを遠視といいます。

近視の場合は遠くのものはぼやけて見えませんが、近くになると光は平行ではなく広がりながら入ってくるため、はっきり見えます。凹レンズを使うことで、遠くからの光(平行光線)をレンズの屈折で広がりながら瞳孔に入ってくる角度に変化させられ、調整力を使わない状態でも網膜に像を結ぶことができます。

遠視の場合は遠くのものも近くのものも焦点は合いません。小児は遠視であることが基本ですが、調整力が強いため視力検査で異常にはならないことがよくあります。遠視は凸レンズで屈折を強くして焦点を近くすることで見えるようになります。

乱視は角膜や網膜、水晶体のひずみが原因でおこります。焦点が一か所にならないため、ひずみを補正レンズで調整して焦点を合わせます。

小児は基本遠視であり、眼窩が成長伸展することで眼軸長(レンズから網膜までの距離)が増し、正視眼に移行します。小児期の近視はこの眼軸長の過剰伸展が原因です。

近視進行の速さは遺伝要因と環境要因の両方が関連します。両親が近視である場合は子供も7〜8倍の確率で近視になることが報告されています。生まれ持った遠視の強さが、将来の近視になるかならないかに大きくかかわります。近年の近視の多さは平均身長が伸びたことと関連するとの意見もあります。近視は目の成長が止まると進まなくなります。眼窩の過剰伸展では、眼球が引き伸ばされることによる網膜の菲薄化がおこり、網膜剥離の危険性が指摘されています。環境因子とは、水晶体調整過剰による筋肉の拘縮です(屈折性近視)。運動後のストレッチのように、縮んでしまった筋肉をストレッチすることで回復します。遠く近くを見るなど(望遠訓練)で、筋肉を緩めることが推奨されています。偽近視の治療を行い、一時は成果を上げながらも結局は本当の近視になってしまうことがしばしばあるのは、近視の進行が、網膜自体が後方に引き伸ばされることによる場合が多いためです。軸性近視はこの筋肉のストレッチ運動では改善しません。近視の人の大部分は軸性のものです。

近視は、レンズ(眼鏡)で補正するか近視屈折矯正手術(レーシック)で外科的に治す等が対応となります。アトロピンなどの筋弛緩薬を使うこともあります。遠視の人に調節緊張性近視の率が高いのは、筋肉緊張の度合いが近視の人より大きいためです。目の疲れを訴える方はこのタイプが疑われます。


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シュレディンガーの猫は量子力学の話ですが、映画<君の名は>ではコペンハーゲン解釈ではなく、エベットの多世界解釈でストーリーが展開しています。 2017年2月

今月の話題はシュレディンガーの猫です。

シュレディンガーの猫とは、蓋のある中の見えない箱の中に、生きている猫、1時間以内に50%の確率で崩壊するラジウムとガイガーカウンター計、ガイガーカウンター計と連動して青酸ガスを発生する装置をいれ、1時間後、ふたを開ける直前には箱の中の猫は生きているか死んでいるかという思考実験です。

量子力学ではミクロの世界では物質は粒子でもあり、波でもある。とされています。これは、二重スリット実験という実験で、AB二つの穴が開いた板に向かって電子を飛ばしたときにその奥のスクリーンには何が映るかということから検証されます。電子を一つ打つとスクリーンには一つの点が映ります。センサーで計測すると、通った穴は一つのみで、ABどちらを通ったかは予測できませんでした。次にひとつずつ大量の電子を打つとどうなるか。当たった点がスクリーン上に増えていきますが、点は均一ではなく、波の干渉による縞模様を作りながら現れてきます。通常、波が二つの穴を通過すると、二つの穴から出たときに半円の波が二つでき、二つの波はお互いに干渉し重なりあい、重なった部分はより高い波になります。高い波の部分が縞模様として現れます。電子一つが穴一つを通っただけなら干渉はないはずです。観測では電子ひとつは一つの穴を通っています。同時に複数個打ってもいません。なのに、波の干渉模様が現れるのはニュートン力学では説明できません。

ミクロの世界では電子は粒子でもあり、波でもあると量子力学では考えます。一般的なコペンハーゲン解釈では電子は観測される前は波のような存在であるが、観測されると粒子になる(収束)。観測される前の波は粒子がどこで観測されるかの確率を表していて、一粒の粒子は観測されると一粒だが、観測される前は複数の場所に同時に存在しているとします。

シュレディンガーは重なり合って存在するミクロの世界の状態がマクロの世界でも成り立つ場合を考えるとそれはおかしいのではないかということで、この思考実験を提起しました。1時間後箱のふたを開けた時に猫は死んでいるか生きているかどちらかではあるのだが、ふたを開けて見たときに初めてすべては決定される。ラジウムが崩壊してミクロの世界における陽子が飛び出しているかどうかは観測されないと決まらず、観測される前は陽子は複数の位置に同時に存在する。猫も、生きている猫と死んでいる猫が同時に存在することになる。日常的な世界ではそれはあり得ないことだということです。

エベレットの多世界解釈では、観測者そのものまでもミクロの塊としてのふるまいを想定します。生きている猫を見ている観測者と死んでいる猫を見ている観測者が両方存在すると解釈します。
映画<君の名は>ではエベレットの多世界解釈で物語は展開されます。


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良くない態癖で側頭骨が前方へ回転、移動すると蝶形骨も前方へ倒れこみ、前頭骨がのしかかるように移動してきます。顎関節の機能異常はここからも発生します。 2017年1月

今月の話題は顎関節の受け側の骨です。

顎関節の構造は上顎の受け側の骨と下顎骨の骨頭から構成されています。
下顎骨は咀嚼時や会話時にたくさん動くため、顎関節の機能というと下顎骨の位置だけに注意が行きがちです。また上下の歯が噛み合うことで、下顎骨の位置は多くの影響を受けるので、儼み合わせにも注意が向けられます。

一方受け側の骨(側頭骨)はイメージとしては不動のように考えられているためあまり詮索されません。しかし、頭蓋骨には多くの縫合があり、縫合が癒着していないということが示すように頭蓋骨の骨は縫合部で可動性があります。レントゲンで見ると頭蓋骨は左右非対称に変形していることがしばしば見られます。カイロプラクティックの方々やオステオパシーの方々は頭蓋骨は呼吸するように常に自律的に動いていると考えています。
関節窩をもつ側頭骨も不動ではなく、外力で移動すると考えるのが自然でしょう。側頭骨は咀嚼筋の影響を受けるため圧力を緩和させるショックアブソーバーの構造をもった縫合を頭頂骨との間に持ちます。
側頭骨の錐体の部分には体のバランスを保つ三半規管が入っており、体の平衡を保っています。三半規管がおかしくなるとめまいが起こり、気分が悪くなり、立っていられなくなることもあります。顎関節症を発症した人の中にはめまい等の付加的症状を持つ人がまれにおられるのはこの三半規管の異常が考えられます。三半規管の入っている側頭骨の移動があった故の顎関節症と考えるとめまいとの関連が説明できます。
咀嚼筋が働き、持続して噛みしめる力がかかると側頭骨は咀嚼筋の引っ張る力で前方下方へ引かれ、移動します。正面からのレントゲンを撮った時に頭の両サイドに側頭骨が耳のように尖って写ることがありますが、これは側頭骨が上方へ移動したときの像を捉えたためです。通常は上下にスライドしながらも中立位にありますが、噛みしめているような持続的な力が作用したり、また筋肉が硬化していると、戻る間もなく常に縮む方向に移動が続き、側頭骨の回転と移動が固定化します。側頭骨の前方への回転が起こると顎関節窩の位置も変化し顆路角も変化します。ここで機能的な影響が始まります。側頭骨が前方へ回転すると蝶形骨も前方へ倒れこみ、前頭骨は顔面頭蓋にのしかかるように移動してきます。頭蓋骨全体が互いにはまり込むような形となります。はまり込んだ骨の場合、仙腸関節に代表されるように自然な動きができなくなり、いわゆる噛みこんだ状態となると考えられます。

頭蓋骨の中では脳脊髄液が循環しており、頭蓋骨は脳脊髄液の流れに応じたゆっくりした呼吸の動きをしているといわれています。頭蓋骨を構成する骨それぞれが自由に動けるようになっていることが必要でしょう。頬杖を突いたり、机に突っ伏していたり、両手であごを支えたり、うつぶせ寝、かみしめ、TCH等は頭蓋骨の変位と頭蓋骨間の儼み込みを引き起こします。頭蓋骨、顔には外からの力がかからないようにすることが大事です。顔の変形は体全体の変位につながります。


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マイクロオステオパーフォレーションは歯の移動を加速させる方法の一つです。歯槽骨に傷をつけ、その治ろうとする治癒機転を利用します。 2016年12月

今月の話題は、マイクロオステオパーフォレーション(micro-osteoperforation:MOP)です。
マイクロオステオパーフォレーションは歯の移動を加速させる方法の一つです。歯槽骨に機械的損傷を与え、その治ろうとする治癒機転を利用します。具体的には歯槽骨に直径1.5mmの小さな穴を複数あけて骨に刺激を与えます。骨は治ろうとして、サイトカインの活性を増大させ、骨改造現象が進行します。歯の移動を50〜60%加速させるという報告もあります。動物実験でも骨のリモデリング(骨の改造現象)が活性化し、サイトカインの発現も増加し、歯の移動が促進されました。

@通常、歯を動かそうとバネで歯に力を加えると、歯の周りの歯周組織に炎症が生じサイトカインが分泌されます。
サイトカインとは細胞外に放出されるシグナルプロテインで、低濃度でも細胞と細胞の伝達に働く重要なタンパク質です。サイトカインには様々な種類がありますが、中でもインターロイキン1は直接破骨細胞を活性化します。白血球を引き寄せ、繊維芽細胞、上皮細胞、破骨細胞、骨芽細胞を刺激し、骨吸収を促進し、骨形成を抑制します。組織の治癒、再生過程には、血小板も大きく関与しています。血小板は創傷組織の再生過程に関与するタンパク質で、サイトカインのキャリアーとしての役割を持ちます。サイトカインの一部をノックアウトしたマウスでは歯の移動が生じないことが知られています。分泌されたサイトカインにより、破骨細胞、骨芽細胞が誘導され、歯の移動が起こります。
マイクロオステオパーフォレーションでは骨に小さな穴をあけることで傷を作り、傷を治そうとする生体の反応を引き出し、より多くのサイトカインを分泌させます。穴をあけるだけなので、術後の痛みも少なく、多くの場合痛み止めは必要ありません。出血も通常すぐ止まります。6カ月から12週間程度効果が持続するといわれています。創傷の大きさに比例して破骨細胞、骨芽細胞が誘導されます。反応には個人差があります。

A歯の移動にはプロスタグラジンも関係しています。
傷を与えることで炎症反応が生じると白血球、単球、マクロファージが組織に侵入し、プロスタグラジン合成が高まり、骨吸収を起こします。ネズミにプロスタグラジンを投与すると破骨細胞が有意に増加しました。プロスタグラジンのインヒビター(阻害剤)、インドメタシンを投与すると歯の移動が遅れます。プロスタグラジンE2はカップリング剤として骨芽細胞の分化や増殖に関与しています。

矯正治療を加速させる方法としてはその他に超音波を利用した方法(アクセルデントacceledent)、サイトカインの注入、レーザーを利用したものなどがあります。


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インビザライン(マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置)には、見た目がきれいなこと、歯ブラシがしやすいこと、などたくさんの良い点があります。 2016年11月

今月の話題はインビザライン(マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置)です。
インビザラインは、マウスピースを使って矯正治療を行う治療方法のひとつです。アメリカの会社が提供しています。個々の歯の位置と形をコンピューターに取り込み、バーチャルシュミレーションにより、コンピューター上で少しづつ歯を動かし、歯並びを治す道のりを作ります。
作製会社のコンピューターエンジニアと矯正歯科医が治療計画を検討し、治療の道筋を何回かやり取りしながら完成させます。1枚のマウスピースで動かすのは0.25mmです。治療の行程を0.25mmづつの動きに分け、分けた数の歯型を3Dプリンターで造型し、その型でマウスピースを作ります。0.25mmづつの動きなので、手数のかかる治療の場合は総計80枚や90枚になることもあります。
マウスピースは、10日から2週間で交換します。1日の装着時間は20時間から22時間です。食事の時間以外は装着します。水以外の飲み物は着色するので、飲むときは外します。
治療を進める中で、マウスピースと歯並びが合わなくなることがあります。柔らかい素材を使うため、使っていく中で変形やたわみなどがあるためです。使い方の誤りが原因のこともあります。プラスチックのカバーで押さえて歯を移動させるため、中で歯をしっかり把持しきれていないことが原因であることもあります。
移動を確実なものにするために、歯に白いプラスチックの突起を接着し、それをハンドルにして歯を移動させます。それでも50%の移動量、悪い時は40%の移動量という研究発表がありました。もし、計画から外れたままでマウスピースを取り換え続けると、実際に歯が動いた分と、コンピューター上でバーチャルに書き上げた歯の動きとがさらに解離します。
治療が長期になればなるほど道を外れる確率は増します。
大きな解離は歯に対して予定以外の方向への動きを強制してしまうこともあります。
マウスピースを使うよりも早く進められる治療、マウスピースを使うよりも適した治療方法がある場合は先にその治療を行い、道のりを減らすことでマウスピース治療全体の移動量を減らし、より少ない枚数で治療できるように計画することがあります。マウスピース単独で行うよりも枚数が減るので、解離の確率を減らすことができます。
一部の解離が大きな場所は部分的な針金などで修正し、予定の道筋に戻します。それでも不十分な場合はもう一度歯型をとり、治療計画をその時点から作り直します。最初から2回のマウスピースを予定することもあります。

本国アメリカで多くの人に受け入れられているインビザラインマウスピース治療は、今まで針金治療に躊躇していた人には朗報です。
見た目がきれいなこと、歯ブラシがしやすいこと痛みが少ないこと、たくさんの良い点があります。小学校高学年から始められます。


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ヒトの聴覚を鋭くしているパーツは、もとは爬虫類の下あごでした。 2016年10月

今月の話題は、顎と耳の関係です。
耳は外耳(耳介、耳孔)、中耳(耳小骨が入る鼓室、耳管)、内耳(平衡覚器、聴覚器)から構成されます。
哺乳類の中耳の鼓室には3つの耳小骨が入っています。鼓膜側からツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨です。ツチ(槌)骨は形がハンマーの形をしていること、キヌタ(砧)は槌で布を打つ台のこと、アブミは馬具の鐙に由来します。耳小骨は鼓膜の振動を内耳に伝えています。ハンマーの柄の部分が鼓膜と結合し、ハンマーの頭の部分はキヌタ骨と関節面を持ち、キヌタ骨の先端はアブミ骨と結合しています。アブミ骨は内耳に前庭膜を介してはまり込んでいます。耳小骨は鼓膜の振動を伝えると同時に、テコの作用により、鼓膜の振動の幅を小さくし、力を増し、音圧を20倍程度増幅します。大きすぎる音を聞いたときは内耳を守るためツチ骨とアブミ骨の筋肉が振動を抑えます。そのため、大音響の後は、しばらく耳が遠くなります。ツチ骨とキヌタ骨の間を鼓索神経(顔面神経分枝)が通っており、舌の味覚と唾液の分泌に関係するため、中耳炎などの炎症では味覚異常や唾液の分泌が少なくなります。
爬虫類の耳には耳小骨は1つだけです(耳小柱)。これは哺乳類のアブミ骨にあたり、鼓膜と内耳の間を連絡しています。爬虫類の顎は上方が方形骨、下方が関節骨(後方で関節を造る)、歯骨(歯が生えている)、角骨(関節骨を下からとりまく)、など小さな7つの骨からできています。
人では下顎は下顎骨のみです。耳小柱は方形骨とも連絡しており、下顎の振動を伝えています。
地面に腹ばいになっている爬虫類は地面の振動を下顎の振動として受け、聞き取ります。
哺乳類の先祖である獣形爬虫類は上方側の方形骨と下顎の関節骨を中耳として取り込んだ構造をしています。方形骨はキヌタ骨、関節骨はツチ骨として耳小骨に作り替えられました。
獣形爬虫類は咀嚼筋を発達させる中で筋肉の力がX型にクロスしてかかったため、歯骨の形が筋突起、顎角、関節突起など筋肉の力で変化し、結果的に顎関節の負担を減らし、キヌタ骨とツチ骨を中耳として取り込んでしまいました。哺乳類への移行の中で強力な咀嚼力と鋭い聴覚が発達することになりました。
コウモリなどの場合はさらに聴覚を発達させるため中耳と内耳を頭蓋骨から遊離させ、骨から伝わる雑音を遮断しています。超音波の反射音を聞いているイルカも耳が頭蓋骨から遊離しています。
爬虫類以外には、鳥類、両生類が耳小骨(アブミ骨)が1つのみです。
魚類にはアブミ骨もありません。アブミ骨は魚類の舌顎骨に由来します。舌顎骨の原器は一列に並んだエラのうちの最前端のエラから変化しました。最前方のエラが骨化して方形骨を後ろから支えています。エラ孔として遺残したものが耳管です。顔面神経麻痺の時は聴覚の異常が起こります。アブミ骨筋が顔面神経に支配されているからです。アブミ骨筋も1番目のエラの筋肉に由来しています。
人間の耳のうち聴覚器は、もとは爬虫類の下あごの一部でした。


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マインドフルネスは海馬を増大させ、扁桃体を縮小します。集中力が高まり、ストレスが軽減します。 2016年9月

今月の話題はマインドフルネスです。
マインドフルネスとは、瞑想の手法から宗教性を排除したものです。
今、現代を代表する企業(ヤフー,グーグル,インテル,フォード等)の多くがマインドフルネスを取り入れています。
仕事前に10分間程度行うことで、集中力をアップ、仕事の効率を上げることができます。
脳の機能や形が変わることが立証されています。ストレスを減らす効果もあり、医療などさまざまな場面で活用されています。

マインドフルネスを検証するために35人を二つに分け、一つのグループは5分間のマインドフルネスを行い、ゆっくり動く体操や散歩などを、意識して3日間行いました。もう一つのグループは、普通に公園を散歩したり、普通に体操をしてリラックスした3日間を過ごしました。
3日間の合宿の2週間後、前頭葉の一部dlPFC(思考や認知など知的活動のまとめ役を行っている部分。大脳全体の司令塔。背外側前頭前野)を検査したところ、ただのリラックスをしたグループではdlPFCの活動が落ちていたのに対して、マインドフルネスをしたグループではその活動が大きく上がっていました。リラックスグループでは脳の一部が同期して活発に活動していました。この活動は脳が何も活動していない時に現れ、車でいうとアイドリング状態にある活動です。(デフォルトモードネットワーク)この時は頭の中が、雑念に飲み込まれています。考え続けるとストレスが溜まっていき、自分でストレスを作り出し、さらにストレスを増大させてしまいます。マインドフルネスのグループではデフォルトモードネットワークと一緒にdlPFCが活動し、デフォルトモードネットワークがうまく制御されていました。ストレスを感じにくい脳の状態です。
マインドフルネスは雑念に飲み込まれている状態から外に出やすくする練習です。考え込んでしまっていることに気づき、雑念から意識を引き戻します。

マインドフルネスの方法は以下です。
@呼吸に注意を向け、息が入ってくる体の感覚を感じる。おなかや胸が膨らんでくるのを、膨らみ膨らみと心の中でとなえる。出ていくときはちぢみちぢみと心の中で唱える。体に任せて呼吸を追いかけていきます。
A雑念が浮かんできたら、雑念に気づき、呼吸に注意を戻します。雑念雑念と声をかけます。戻りますと声をかけます。呼吸を感じ、身体感覚に戻します。後半は注意のフォーカスを広げていきます。パノラマ的に体全体の感覚を感じ取るようにします。(床についた足の平の感覚、体がすっと伸びている感じなど)
Bいろいろなものを同時に感じとります。周りの空気の動き、周りの音などを感じ取ります。雑念が出てきてもそのあたりに漂わせておきます。最後は瞼の裏に注意を向けてゆっくり目を開けます。1日45分のマインドフルネスを8週間行って、海馬の灰白質の大きさが5%増大したことが観察されています。海馬は記憶や感情のコントロールにかかわる部位です。ストレスを受けると損傷し、うつ病に繋がる可能性が指摘されています。不安や恐怖に反応する偏桃体は5%縮少していました。ストレスに対する過剰な反応が抑えられます。


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なんば歩きは一軸ではなく二軸で歩く歩き方です。腰に負担がかからずお年寄りにも負担の少ない歩行です。 2016年8月

今月の話題はなんば歩きです。
なんば歩きとは一般に同側の手足が同方向に動く歩き方とされています。間違いとは言えませんがこれが本質ではありません。或いは、腰から下のみが前進するようにし、上体はただ腰に乗っかって運搬されるような形、左右の半身を繰り返し、手を振るということではないとし、着物を着た時に腰のねじれがないので着崩れが起きにくいとされています。この解釈も誤解です。手足の振られる順序にとらわれたり、半身を繰り返すということではありません。
なんばでは、振り出される足と逆足の肩が前方へ動き、さらに肩は下方向へ引き込まれます。体を通る軸が一本ではなく、左右二本の軸を持ち、2軸を交互に使います。軸を交互に支点とすることにより足を踏みかえて前進します。結果的に腕の振りは交差型ではなくなります。通常の一軸の歩行では、振り出された足と同側の骨盤が前方へ動くように回転します。一軸の歩行では、骨盤の回転を補償するために肩を骨盤とは逆方向へ回転させます。足が体の内側へ振り出され、両足は直線に近いラインを踏んで進みます。しっかり地面を後ろへ蹴る、腿を高く上げる、腕を大きく前後に振るが、中心軸感覚の歩き方です。前方へねじった腰や肩は後方へねじり戻さねばならず、エネルギーのロスが大です。一方向へのねじりを止めないと反対方向へねじり戻せません。
短距離走の研究で、海外のトップアスリートと日本人選手との間で、有意な関係にあったのは接地する直前からキック局面の中間地点までの脚の後方スイング速度の差のみでした。引きつけ、腿上げ、振り出しの速度では有意差はありませんでした。後方スイング速度は2倍近く差がありました。彼らのトレーナーの指導は@脚を真下に踏みつける。A脚をターンオーバーさせる、です。ターンオーバーとは足先の軌跡が最高点を通過後急激に下方へ移動する動きです。脚を真下に踏みつけること、脚の後方スイングではなく遊脚の動きを操作することで後方スイングの速度を上げています。足関節を使って蹴る動作はせず、真下に踏みつけます。トップアスリートの足首の運動範囲は約20度、日本人選手は45度近くあり、日本人選手は足首で蹴る動作が大きいことがわかります。
なんば歩きでは2直線走歩行が基本であり、すり足に近い形です。それぞれの足が2直線上を進むことにより、体幹がねじられずエネルギーロスが少なく、脚がターンオーバーしやすくなります。一軸走歩行では、足と同側の骨盤はほぼ同方向に動きます。なんばでは右足が振り出されるときは左腰が前方へ動きます。この骨盤の動きにより、着地足が離地した後のターンオーバーが可能になります。
すでになんばの動きは日本では忘れられながら世界では取り入れられ、応用されて成果を上げています。エネルギーロスが少なく、腰に無理のかからないなんばは介護でも有効です。


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離乳食が始まったらしばらくはアレルギー食品は食べさせない方が良い、は誤りです。 2016年7月

今月の話題は、アレルギー発症のメカニズムです。
2000年にアメリカ小児科学会が出した指針では、子供をアレルギーにしないためには妊娠中、授乳中の母親はアレルギー食品を避けること、子供に乳製品を与えるのは1歳以降、卵は2歳以降、ナッツや魚は3歳以降にすべきである、となっていました。日本でも広く知られた指針です。
しかし、指針が出された2000年以降もアレルギー発症の急増は抑えられませんでした。ピーナッツアレルギーの場合、ピーナッツを良く食べていた妊婦から生まれた子供の方がピーナッツアレルギーの発症率が低いことがわかりました。ピーナッツを避けた子供のグループでも17.3%がピーナッツアレルギーを発症しました。ピーナッツをよく食べた子供のグループではピーナッツアレルギーの発症は3.2%にとどまりました。
Tレグのメカニズムがわかった現在では、ピーナッツを食べることでピーナッツという異物への免疫攻撃を止めるTレグ、ピーナッツTレグが作られたからと解釈できます。
ピーナッツアレルギー発症者の91%が生後半年以内にピーナッツオイル入りのスキンクリームを使っていたことがわかっています。特に肌荒れやアトピー性皮膚炎を持っている子供がピーナッツアレルギーを発症しています。
皮膚からアレルゲンをすり込まれることにより経皮感作されたと考えられます。
すし職人の魚アレルギー、そば職人のそばアレルギー、牡蠣の殻むき作業の女性たちのカキアレルギーなども同じです。
体内には食べた食べ物ごとに専門のTレグが存在し、食べ物への免疫攻撃を抑え込んでいます。
腸から入ってきた異物に対して専門のTレグが作られ、アレルギー反応が回避されます。
皮膚から体内に入ってきた異物については、異物と判断されれば感作が起こり、記憶されます。再び侵入してきたときに異物として攻撃されます。
一時ニュースにもなった洗顔石鹸によるアレルギーも同じメカニクスで発症しています。洗顔石鹸に含まれていた加水分解コムギ、グルパール19sが発症させたアレルギーです。小麦は保水や泡立ちのために使われますが、従来のコムギより分子量が大きく、分子量が大きいと免疫細胞の攻撃対象となりやすいことが知られています。洗顔時の皮膚から体内に入ったコムギに対して、感作(経皮感作)がおこり、その後食物として腸から体内へ入ってきたときに、異物として攻撃の対象となり、激しいアレルギーを発症しました。
一度敵とみなしたものについてはその記憶は簡単には消えません。
花粉症も経皮感作で起こると考えられています。風邪などをひいて、気管支の粘膜が炎症を起こしているときに、花粉が皮膚バリアの壊れた部分から体内に入り込み、抗原提示細胞に取り込まれ、異物として記憶され(感作)、再び花粉が体内に入ってくると、攻撃が始まり、花粉症が発症します。
先に腸から吸収されれば、攻撃を止めるTレグが作られ体は異物を受け入れます。先に皮膚から入ってしまうと異物を攻撃対象として記憶します。アレルギーになるかならないかのレースのようなものと考えられています。
腸からいち早く入れるようにすることがアレルギーを予防する方法です。腸から吸収することでその物質のTレグを作り出すことができ、アレルギーの発症を予防します。


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免疫細胞には、暴走するT細胞を制御する制御性T細胞、通称Tレグがあります。この発見はノーベル賞の候補にもなっています 2016年6月

今月の話題は、制御性T細胞、通称Tレグ(Regulatory T Cell)です。Tレグは免疫細胞の攻撃指令が伝わるのを物理的に邪魔したり、攻撃が伝わらなくなるような物質を出したりして、T細胞の動きを止めてしまう働きをする免疫細胞です。大阪大学の坂口教授が発見しました。

通常、皮膚などから細菌が侵入すると、マクロファージや樹状細胞といった抗原提示細胞が抗原を取り込み、リンパ節のT細胞に抗原提示を行います。T細胞は異物を有害と判断すると排除攻撃指令を出します。T細胞は分裂して数を増やし、現場にてサイトカインを放出し、周囲の免疫細胞を活性化し、侵入者を攻撃させます。
マクロファージ、キラーT細胞、B細胞などが実働部隊となって攻撃します。この時に誤って自分自身を攻撃してしまうのが自己免疫疾患です。1型糖尿病(免疫細胞が膵臓のβ細胞を間違えて破壊する)やクローン病(免疫細胞が誤って腸の細胞を攻撃してしまう)などがあります。自己免疫疾患の治療には免疫抑制剤を使うことで対応しますが、感染症やガンに対する免疫力も失われてしまうため、難しい治療です。
Tレグを利用すると、自己免疫疾患を引き起こしているT細胞のみ抑え込めばよいので、治療が易しくなります。
臓器移植では、移植した臓器を異物と判断し、攻撃してしまうため、移植した臓器が定着しないことがあります。通常は免疫抑制剤を用いて免疫の攻撃を少なくして定着を待ちます。
徐々に免疫抑制剤の使用を減らしていきますが、いったん体が臓器を受け入れたように見えても免疫抑制剤を減らすと、免疫の攻撃が再び始まり、結局臓器が定着しないことがあります。
このような場合に、移植した臓器と一緒にTレグを体内に入れると、免疫を減らさずに臓器が定着できます。

ガン治療においても、ガンがTレグに働きかけて、T胞の攻撃を止めていることがあります。このT細胞の動きを間違えて止めているTレグを止めて、T細胞の攻撃を復活させ、ガンへの攻撃を再開させる治療も始まっています。 身近なところでは、花粉症にもTレグが関与しています。風邪をひいて粘膜が炎症を起こして皮膚の通過が弱っているときなどに、バリアを通過して花粉が体内に入ってくると、入ってきた花粉をT細胞が間違えて攻撃対象と判断し、攻撃指令を出してしまうことがあります。
T細胞の攻撃指令を受けたB細胞がIgE抗体を産生し、IgE抗体はマスト細胞に接着します。
再び花粉が体内に侵入してきたときに、接着したIgE抗体がアンテナの役割をして反応し、マスト細胞内のヒスタミンが放出されます。
ヒスタミンは炎症症状を起こして、くしゃみや涙目で花粉を体内から排出しようとします。花粉症を発症しない人の場合はT細胞が花粉を無害と判断した場合と、もし有害と判断した場合でもリンパ節内のナイーブTレグ(Tレグを作る細胞)が抗原提示を受け、花粉への攻撃を止めるTレグを作った場合です。T細胞の攻撃命令は実働部隊の免疫細胞たちに伝わらず、花粉症は発症しません。

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骨性癒着歯はけん引してみないと確定診断はつきません 2016年5月

今月の話題は骨性癒着による歯の萌出障害です。
歯の骨性癒着は乳歯、永久歯ともに発生し、乳歯の場合は後続永久歯の萌出障害を引き起こします。骨性癒着した残存乳歯は、しばしば咬合平面より低位にあり、生理的動揺度が少なく、一見してそれと推測が可能です。通常は抜歯することにより、後継永久歯の萌出を促すことで、以後は良い経過をとることが多い。永久歯に骨性癒着が発生した場合、当該永久歯の萌出が障害され、以後の萌出が停止することになります。

骨性癒着の診断は、
@ 生理的動揺が認められない。
A エックス線写真上で歯根膜腔が欠如している。
B 打診によって高い特徴的な音がする、ことで推測します。
しかし、エックス線写真所見や打診音からの情報では骨性癒着を確実に判断することは難しく、実際に歯を動かしてみて、動かないことを確認する以外確定診断はほとんど不可能であると云われています。

萌出障害には3タイプあり、
@ 骨内において萌出を妨げるものがある場合。
A 正常な位置で萌出したが、歯肉内で萌出が止まったもの。
B ほぼ正常な位置で萌出し歯冠の一部が露出したところで止まったもの、です。
正常に萌出し、咬合平面に達しているが、その後は経年的歯の移動がなく、停止している場合もあり、この場合は事前に予測がつかず、矯正治療を行って初めて歯の移動ができないことがわかり、癒着が判明します。

骨性癒着の原因は、
@ 遺伝、あるいは先天的な歯根膜の発育障害
A セメント質過形成
B 外傷などによる局所の障害
C 歯根膜に広範な壊死が起こった場合
D ウイルス感染(ムンプスウイルス、ヘルペスウイルス)、その他原因不明なこともあります。

骨性癒着歯への処置は、
@ 限局的骨切り術;歯槽骨ごと歯を移動させ、固定する。
A 再植術;癒着部位を分離するため一度意図的に脱臼させ、抜髄、癒着面の滑沢化等を行ったうえで、希望する位置へ移動し固定する。
C けん引;癒着部位を分離するため意図的に亜脱臼させ、その直後にけん引移動する。
D 抜歯。
E 歯冠切断し、補綴治療を行う、があります。
再植術については置換性外部吸収(歯根歯質が骨と癒着し、徐々に骨に置換されるタイプの外部吸収が起こること)を生じることもあります。亜脱臼による処置成功率は70%とされていますが、2回亜脱臼を行っても動かない場合は抜歯すべきというレポートがあります。置換性吸収が進行している場合、吸収の程度によっては脱臼時に歯根の破折が起きることがあります。置換性吸収のおきた根面の滑沢化を行い再植し、長期に使用できたというレポートもあります。

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身長を伸ばすのに必要なカルシウムは牛乳からはとれません 2016年4月

今月の話題は身長の伸びです。小学校低学年では身長は毎月4〜5mm伸びるのが普通です。
少ない場合は小食であるか、タンパク質合成能力が弱いかです。
背を伸ばすためには、材料のタンパク質(アミノ酸)をいかに多く、体に取り込むかがポイントです。
思春期が遅れれば遅れるほど身長は伸びます。思春期が始まるまでにできるだけ伸ばしておくことが大事です。
思春期がはじまると5年後には身長の伸びは非常に小さくなります。
思春期が始まると約2年間、背の伸びの高い状態が続きます。
1か月で7〜10mmの伸びがみられます。1か月に6mm以下のときはその原因を探る必要があります。
男子は、声変わりが始まると、もうすぐ止まりゆく3年です。
女子の場合は生理が始まった時はすでに止まりゆく3年のうちの前半6か月を過ぎています。
止まりゆく3年の背の伸びは、最初の1年が4〜5cm、次の1年が2〜3cm、最後の1年が1cmです。
この時期は自己成長ホルモン分泌能力が急低下する時期です。
背を伸ばすには、
@ 運動をした後、あまりに疲れ果てると食欲がなくなり、食べないで寝てしまうことがあります。しかしこれはだめです。運動量を上回るだけしっかり食べる必要があります。陥りやすいのは水泳とクラシックバレエ、剣道などです。
A 朝食を抜くと体は体内の蓄積脂肪や肝臓内のグリコーゲン分解でエネルギーを得ようとします。朝食を抜くのもだめです。
B 多少太っているからといってダイエットしてはいけません。炭水化物、脂肪を少なくしてタンパク質をしっかり取るようにしましょう。
C 夜更かしをしない。成長ホルモンの分泌を高めましょう。骨端線部の軟骨レベルの増力が高まります。11〜12歳の中学受験の夜更かしはしっかり食べていれば大丈夫です。
D 止まりゆく時期での激しい運動は背の伸びを止めてしまうことがあります。いじめにあっていても身長の伸びは止まります。思春期が始まってしまうとそこからは、決まった量の伸びで身長は止まります。両親の一方が思春期早発で背が低い場合は、子供も思春期早発を起こしやすいと言われています。
E 大豆のイソフラボンは女性ホルモン様作用をします。背の伸びが止まりかけている時期に納豆、味噌汁、豆腐、枝豆などの大豆食品を常食すると伸び率が低下します。男子は声変わり後、女子は生理が始まりそうになったら、大豆食品の摂取は控えた方がよいでしょう。醤油などの、調味料は少量なので構いません。止まりゆく時期以外の大豆摂取は問題ありません。
背が止まりゆく時期は、骨端線部位の軟骨細胞を十分に肥大化させてから骨化させるのが正しい背の伸ばし方です。カルシウムを過剰に摂取すると十分に肥大化する前に骨化する可能性があります。
カルシウムをサプリメントなどで過剰に摂取することは望ましくありません。伸び盛りの時や、園児、学童期はかまいません。カルシウム摂取には、牛乳は良くありません。
従来牛乳摂取量の多い地域に骨粗鬆症の発症が多く、疑問に思われてきました。牛乳や肉類などの動物性食品は血液を酸性に変え、それを中和するために骨からカルシウムが溶出し、尿のカルシウム排出が増えることが発見されました。牛乳ではカルシウムはとれません。

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足、足指の変形、歪みはひざ、腰の痛み、噛み合わせの不調の原因となっていることもあります 2016年3月

今月の話題は足指です。
足指が靴を履いたときに曲げられていると、その上の体幹が影響を受けます。噛み合わせも影響を受けます。足指は真直ぐ伸びていることが大事です。
日本人の足指の形は3つのタイプに分かれます。親指よりも人差し指が長いタイプはギリシャ型、狩猟民族タイプ、目が弱い傾向がある。親指が一番長く、順に短くなっていくエジプト型、遊牧民族タイプ、鼻が悪い傾向がある。
5本がほぼ同じ長さのスクエア型。農耕民族タイプ。東洋医学では、体の部位と臓器にはそれぞれ関連があるといわれ、歩行時に特定の指に強く圧力がかかると、それぞれ関連する臓器を痛めるためと言われます。
足には3つのアーチがあり、クッションの働きをしています。
@ 前方横アーチ:指の付け根をつなぐアーチ
A 外側アーチ:縦の外側のアーチ。内反小趾、О脚の人はこのアーチが崩れています。
B 内側アーチ:縦の内側のアーチ。崩れると扁平足になります。
履いている靴や生活習慣が原因で足指の変形はおこります。靴サイズが小さくて幅の狭い窮屈な靴では指がまっすぐ伸びず、指の変形原因になります。大きすぎると中で足が滑ってつま先にあたり、やはり中で指が曲がります。滑りやすいと、とっさの動きに対応できず、無意識に指を曲げて緊張し続けているため、屈み指の原因になります。靴ずれ、タコの原因です。
変形には以下の3種類があります。
@ 浮き指:指が地面に付いていない。浮き指が進行して内側に反れ曲がって、くの字に変形したものが外反母趾。
A 寝指:指がねじれて隣の指の下に潜り込んでいる。
B 屈み指:指がいつも屈曲しているもの。
靴を選ぶときは、かかとがしっかり支えられていることが必要です。靴の中で指が自由に動けるか、さらに靴の先端に隙間があることを確かめます。必ず履いて歩いてみます。かかとがしっかり押さえられているか、中で足が滑らないか確かめましょう。3つのアーチが圧迫されていないか。歩幅を変えて試してみます。ハイヒールは外反母趾、内反小趾の原因になります。なるべく履く時間を短くすることが良いでしょう。
ケアとしては、つぼ療法で爪もみをすると気の流れが良くなります。爪の生え際の両側、少し下あたり井穴(せいけつ)を刺激します。小指は耳。親指は頭痛や鼻に関連します。足、足指の変形、歪みはひざ、腰の痛みの原因となっていることも多いといわれています。5本指ソックスを履くと、血行が良くなり、しっかり踏んばることができます。改良されたサポートソックスでは指の矯正がなされるため、さらに良い効果があります。オリンピック選手が五本指ソックスを履き、上体が安定し、体の揺れが少なくなり、動作がスムーズになったという話もあります。ひも靴は、ひもで靴をしっかり足にフィットさせやすく、推奨です。足指のストレッチも効果的です。足と手で握手をします。足指の間に手の指を入れて握手し、握りしめるようにします。無理のないように、何回かするとよいでしょう。左右行います。

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プロバイオティクスとして、虫歯菌、歯周病菌に選択的に効く薬、L8020菌抗菌ペプチド、イータック 2016年2月

今月の話題はイータックによる歯の抗菌についてです。イータック(Etak)は広島大学の二川浩樹教授によって開発された抗菌システムです。歯垢がべっとりあるのに虫歯や歯周病になっていない人がいることはよく知られています。これは口腔内の常在菌の菌株の違いによるものと考えられています。このことにプロバイオティクス(probiotics)の考え方を応用したものがイータックです。プロバイオティクスとは、自然由来の乳酸菌などの善玉菌と呼ばれる有益な菌を取り込んで、悪玉菌の増殖を抑え健康を維持しようという方法です。ビフィズス菌、宮入菌など、宿主に有益な作用をもたらす生きた微生物を腸内フローラに取り込み、体のバランスを改善します。一方、消毒薬、抗生物質、抗菌剤を使って細菌を減少させ、治癒に向かわせる方法はアンチバイオティクスといいます。
口腔にプロバイオティクス作用を適用し、オーラルフローラに有用細菌を取り込ませることで病原微生物の感染力を抑え、宿主と病原微生物のバランスを整える、それにより、う蝕や歯周病のリスクを少しでも抑えることはできないか?そう考え、二川教授達は、う蝕り患歴のない子供からお年寄りまで13名の唾液を採取しました。その唾液から乳酸菌株42菌株を分離し、スクリーニングを行いました。
@虫歯菌ミュータンス菌に対して抑制効果の高いもの、
A歯周病菌であるPG(ポルフィロモナスジンジバーリスPorphyromonas gingivalis)菌への抑制効果のあるもの、
Bカンジタ菌(candida)にも効果のあるもの
を探し3菌株を分離しました。歯周病は歯周組織の炎症から始まりますが、その原因となるのはPG菌などの細胞壁を構成するリポ多糖(Lipopolysaccharide,LPS)と呼ばれる内毒素です。PG菌など歯周病菌の多くはグラム陰性菌で、内毒素であるLPSを産生し、歯周組織を破壊するだけでなく、炎症部分から炎症性物質(サイトカイン、ケモカイン)やLPSが出て血流を介して全身に伝播されます。それらにより、全身はさまざまな悪影響を及ぼされます。歯周病菌が破壊されても、LPSが残っていれば全身の健康に悪影響を与えてしまいます。カンジダ菌はバイオフィルム形成を促進し、持続させます。カンジダバイオフィルムが形成されると殺菌成分は内部まで浸透しません。3株の内の最も有効な菌が分離され、様々な試験を行いました。ミュータンス菌(Mutans streptococci)の口腔内保菌を有意に減らすことができました。pgLPSに対する不活性化作用も確認されました。炎症性サイトカインの発現も抑制することが確認され、歯周病菌連鎖を食い止められることがわかりました。
L8020菌と名付けられた分離菌の抗菌ペプチドには、カンジダ菌に対する抗菌作用も認められました。抗菌ペプチドはEtakと名付けられ、その後の試験で、ノロウィルス、コクサッキーウィルス、MRSA、O157、サルモネラ、マイコプラズマにも有効なことがわかりました。2013年 イータックは『感染の拡大を防ぐ固定化出来る抗菌抗ウィルス消毒薬』として文部科学大臣表彰(科学技術省 開発部門)を受けています。現在、イータックを使った義歯用薬剤、ハブラシ消毒剤、ヨーグルト、タオルが実用化されています。

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寝ているときの歯ぎしりでは、ほがらかな解放された表情をしていることが多い 2016年1月

今月の話題はブラキシズムです。ブラキシズムとはくいしばり、歯ぎしり、タッピングなど、寝ている時のみならず、起きている時も行なわれる、咀嚼運動とは違う下顎の動きをいいます。 ブラキシズムと関連するといわれている諸問題としては、睡眠の質(睡眠障害、無呼吸症候群)、精神心理問題(ストレスフルな生活、うつ症状)、身体症状(頭痛、肩こり、首こり、めまい、耳鳴り、目の奥の痛み、腰痛、手足のしびれ等)歯科領域問題(顎関節症、口腔顔面痛、咬耗、骨隆起、破折、咬合性外傷,舌頬粘膜圧痕、咀嚼筋障害)が指摘されています。
ブラキシズムをしていると自覚している人の82%は実際にはブラキシズムをしていません。反対にブラキシズムをしていないと思っている人の19%にブラキシズムがあったという研究があります。
家族や、同室者による指摘がないとブラキシズムの認識は難しく、正確ではありません。歯の咬耗度とブラキシズムとの程度の関連性もありません。
頭頚顎部の自発痛、運動痛、頭痛、筋触診のスコア、舌のスキャロップ状の圧痕、頬粘膜の圧痕、なども有意性はありませんでした。
ブラキシズムはストレス発散の一つの方法です。実際ブラキシズムの最中はほがらかな解放された表情をしていることが観察されます。
ブラキシズムの増大因子としては、不安、ストレス、性格、遺伝、があります。関連性があるものとしては外傷、睡眠呼吸障害、睡眠に関連した覚醒(胃の中に内容物があるなど;逆流性食道炎の原因)、薬物、アルコール、カフェイン、喫煙があります。
形態学的な要因(口腔顔面の骨格の解剖学的要素、咬合や顎関節の形態的要素)は原因となっていないことがわかりました。何か気になることがあるといてもたってもいられなくなり、いろいろな病院に行って結果を聞いたり、病院で異常なしと言われるとさらに不安になる傾向を持つ人は、ブラキシズムを発症している人に多いことも報告されています。
一方、顎関節症は、初発因子には大開口、堅固物咀嚼、長時間歯科治療、過(低)修復物、むちうち症、寝ころんで咀嚼、顔の殴打があります。
顎関節症の持続因子としては、ブラキシズム、楽器演奏、頬杖、うつ伏せ寝、パソコン姿勢、繊維筋痛症、リウマチ、うつ、不安、薬物、ストレスがあります。
顎関節症の中身は、繊維筋痛症(マイオファシアルペインMyofascial pain)が全体の78%を占めています。その他として関節痛、関節炎等、があります。
筋肉の問題が咀嚼筋を固めて動かなくしていると考えられます。
ブラキシズムにはスプリントが有効ですが、顎関節症にはスプリントは50%程度しか有効ではありません。顎関節症の治療には、生活習慣の改善、TCHのコントロール、運動療法、マッサージ療法、温熱療法、ストレス、トリガーポイントブロック注射、等が行われます。

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中学生以上の抜かない矯正では大臼歯の遠心移動が必要なことがあります

今月の話題は大臼歯の(後方)遠心移動です。中学生以上の抜かない矯正治療においては大臼歯の遠心移動が多くの場合必要です。
その理由は歯の生理的な性質にあります。歯の根は真直ぐではなく根尖で後方へほんの少し曲がっています。

咬合力がかかるたびに歯はいったん沈み込みまた浮き上がる動きをしますが、そのたびごとに少しずつ前方へ移動していきます。 この性質があるため歯並びはバラバラにならずに一つの連続したアーチの形状を保っています。隙間ができると後方の歯が前方へ移動して隙間を埋めます。
歯の種類によってこの力が強い歯と弱い歯があります。口が開いていたり、舌で前歯を押す癖があったり、下唇で上顎前歯を下から押し上げる(下唇を吸い込む、下唇を上顎前歯の下にはさむ、下唇を噛む)癖があると上顎前歯は前に押し出され、その跡に後ろの歯が移動してきます。
奥歯はどんどん引きずり出されて、本来の位置より前方へ移動していき、前に押し出された上顎前歯は後ろの歯が一緒に前方へ移動してくるため戻れません。
上顎前歯が斜めになると下顎前歯との間の空間がますます大きくなり、さらに下唇が入り込みやすくなります。
楔を打つように上顎、下顎前歯の位置は連続しておし広げられるように変化します。
移動は一方方向へ(上顎前歯はさらに斜めに、下顎前歯はさらに内側へ)止まることなく続きます。
そのため小学1年生くらいではそれ程でもなかった、上顎前歯の傾きは年齢とともに悪化します。5年前の状態と今の状態を比べると必ず状況は悪い方向へ変わっています。歯の重なりがひどくなっていることもあります。
歯列の拡大だけでは隙間の確保に限界がある場合があるのはそのためです。出てきてしまった歯を元に戻すには戻る先の隙間が必要です。
小臼歯を抜いて隙間を作る方法が多く行われていますが、前方方向へ引きずり出された大臼歯をもとの位置に押し戻せれば本来の形が復元できることになります。
この方法は20年ほど前に開発され、臨床に応用されてきました。それ以前は大臼歯をもとに押し戻す方法がわからなかったため、ほとんどの場合、抜歯による隙間の獲得が採用されていました。なるべくひどくなる前に、年齢が若いうちにリセットすることが成功の秘訣です。近年矯正用アンカースクリューが登場し、大臼歯の遠心移動はさらに成功の確率が高くなってきています。

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脳の進化 2015年11月

今月の話題は脳の進化です。
ヒトの脳は他の動物に比べて大きく巨大化しています。脳にどのくらいの考える力があるかを検討するとき、脳化指数が使われます。
体の大きさによって脳容積の評価が左右されないよう脳容積を体重の三分の二乗で割って求めます。(現在は四分の三乗に変わりました。)
チンパンジーでは0.308、オランウータンでは0.290、ウマは0.084、ウシは0.060、イヌは0.162、それに対してヒトでは0.866と、圧倒的に大きな数字となります。
単純に比較はできませんが、数字の大きいほうが知性があるという評価です。
一般に霊長類は大きな脳化指数を示しますが、これは木に登るという生活が脳の機能的発達を促し、巨大化させたためと考えられています。
ウザギやウマ、ウシなどの草食獣は、脳化指数は小さく、敏捷で複雑な狩りをする肉食獣では、脳化指数が大きくなります。
猿人のアウストラロピテクスの場合は脳容積400cc位50キロほどだったと想定すると、チンパンジーやオランウータンと同程度の脳化指数です。
霊長類の中でもホモサピエンスの場合は、道具の使用や製作などの手先の作業がさらに脳を高度化巨大化させていきました。
他の霊長類でも道具を使うことはありますが、ホモサピエンスの他の霊長類との決定的な違いは、道具を使うだけでなく道具を製作することです。
オランウータンは木の枝で水の深さを測って河を渡れるかを判断したり、チンパンジーは石を使って硬い木の実を割ったりしますが、両者とも道具の製作はしません。
アウストラロピテクスより少し新しいガルヒ猿人は石を割っただけの石器を使っていました。
ここでおそらく利き手が形成されたと考えられています。
大脳半球の左右にも分化が起こり始めたと考えられます。
二足歩行することにより咽頭が、重力により下方へ落ち込み、咽頭の周辺に空洞が作られ、この空洞を使い、さまざまな声の作り分けをするようになります。
猿人ではまだですが、原人の段階になると咽頭の落ち込みがかなりな程度まで進んでおり、言語の発達が考えられ、さらに脳の発達を進めました。
言語の中枢は左の脳に偏るため、原人の左右の脳の形の非対称性からも、言語を操る部位が発達し始めていると指摘する研究もあります。
現代のヒトの脳でも左側の方が右より若干大きいことが統計的に確かめられています。右利きの多いヒトでは左側の大脳が速く発達し、結果的に左脳の方が大きくなったと考えられています。

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筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)と繊維筋痛症(FMS) 2015年10月

今月の話題は、全身性の筋肉痛、筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)と繊維筋痛症(FMS)です。
@ 筋・筋膜性疼痛症候群(MPS)は女性に多く、筋・筋膜およびその周囲の軟部組織の疼痛症候群を言います。
MPSでは起立に関連する筋肉、首、肩、腰の筋に痛みを生じます。レントゲン、病理検査、血液検査でも異常は見つかりません。 診断基準は、
 A 筋に触れると索状硬結を触診する。
 B 索状硬結内に鋭敏な圧痛点がある。
 C 痛みの愁訴は索状硬結内の圧痛部位を圧迫した時に認知される。
 D ストレッチさせようとしても痛みのために可動域制限がかかる。
筋肉内に圧痛点とトリガーポイントがあります。トリガーポイントとは刺激した部位から離れた部位に痛みが引き起こされる圧痛点のことをいいます。トリガーポイントの多くは鍼灸のツボと一致していると言われています。筋肉に高張食塩水を注射するとそれがトリガーになって広い範囲に痛みが現れます。関連痛、放散痛ともいわれます。ケネディ大統領の背筋痛を、圧痛点にプロカインを注射することで硬結を弛緩させ痛みも消失させたことで有名です。
A 繊維筋痛症(FMS)は体の広い範囲にわたって起こる原因不明の筋肉痛症候群です。
40〜50代の女性に多く、痛みだけではなく不眠、全身の疲労感や種々の症状を伴います。診断基準は3か月以上にわたる痛みがあり、圧痛点を4Kgの力で押したときに全身18か所設定されている圧痛点の内11か所以上で痛みを訴えたときに診断されます。筋肉の痛みとこりの好発部位は首、肩、臀部、など上半身に両側性に出ます。目の奥の痛み、口腔内の痛み、頭痛など様々な疼痛症状があります。安静時にも痛みがあります。痛い部位が移動したり季節により変動したりします。疲れ、こわばり、睡眠障害、頭痛、感覚異常、軟組織の腫れぼったい感じ、過敏性腸症候群などの症状が高頻度で合併することが知られています。原因はわかっていません。
日本ではさほど多くないと考えられていましたが、実際には有病率は2%ほどもあり、さらに的確な診断がなされていない場合が多く、今後も増えていくことが予想されています。抗うつ剤の投与が有効であり、軽い運動も有効であると言われています。通常云われている筋肉痛は乳酸がたまったために起こるのではありません。筋肉痛時の乳酸値は高くありません。運動により、筋繊維、筋膜や周辺の結合組織が破壊され、逸脱酵素やミオグロビンンが血中に排出されると細胞内カルシウムイオンが増え、タンパク分解酵素が活性化され、筋肉の破壊がさらに進みます。筋肉の破戒産物は肥満細胞を活性化し、それによって産生された炎症メディエーターや、サイトカインが腫脹、痛みを引き起こすと考えられています。

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血液抗凝固薬ワーファリン 2015年9月

今月の話題は血液抗凝固薬ワーファリンです。歯科で抜歯をすると出血しますが、通常は圧迫すると止まります。
これは生体防御作用の一つで、血栓が傷をふさぐことで止血されます。血栓には血小板血栓(一次血栓)と、フィブリン血栓(二次血栓)があります。
血小板血栓は血液中の血小板が血管の損傷部位に集まり、固まってできます。フィブリン血栓はフィブリン生成反応(血液凝固系)により作られ、血小板血栓より物性が強固です。
通常の状態では血栓ができないように血液凝固系は抑制されています。
高齢者に多い心房細動のように血液凝固系が活性化されやすい状態で、心臓内に血栓が作られると、作られた血栓が末梢の動脈をふさぎ、血流を止めてしまいます。
そこから先の組織には壊死が起こり、梗塞が発生します。脳に梗塞が発生すると脳梗塞です。
このような梗塞を予防するために血液凝固系の抑制が行われ、この時に使われる血液抗凝固薬の代表がワーファリン(ワルファリン)です。
ワーファリンは1962年から使われています。ワーファリンを使っている人が歯科で抜歯を行った場合は、止血が難しくなります。医科との対診が必要になります。
抜歯の日に合わせて投与を中止する、服用量を減らす、などが考えられます。

実際には
@ ワーファリンの服用を中止すると約1%に血栓塞栓症が発生する。
A ワーファリンを服用したまま抜歯を行うと0.2%に異常出血がおこる。
そのため通常はワーファリンを服用したまま抜歯を行います。異常出血も局所止血処置で対応します。
ガイドラインでは、
 A ワーファリン継続下に抜歯可能なINR(抗凝固作用プロトロンビンン時間国際標準比)は3.0以下。
 B 抜歯判定のINRは抜歯の72時間以内のものを使います。
B INRが治療可能域内での普通抜歯では大多数は30分以内で止血する。
C 止血は局所止血材の使用、縫合、圧迫止血によって行われる。
D 止血シーネを使用することもある。
ワーファリンはビタミンK依存の凝固因子の生合成を抑制することにより凝固系の複数のステップを抑制して抗凝固作用を発現します。
ワーファリンは適切な抗凝固作用を維持することが難しく、抗凝固作用が強すぎると脳出血などが起こりやすく、弱すぎると脳梗塞のリスクが高くなります。
定期的にINRを測定し、量の調整が必要です。
また多くの薬剤(解熱鎮痛消炎剤:アトセトアミノフェン、セレコキシブ、アスピリン、インドメタシン、サリチル酸類、等。抗生物質製剤:マクロライド系、セフェム系、ペニシリン系、テトラサイクリン系)により、作用が増強される性質があります。
納豆やビタミンKを多く含む食品は抗凝固作用を弱める働きがあります。
たくさんの問題点があるため、新しい抗凝固剤(ダビガトラン:NOACs)も開発されてきました。ダビガトランはマクロライド系のみ併用注意です。
まだ歴史が浅いため、臨床データの蓄積が十分ではなく、不明な点も多々あります。歯科的にはINRが使えない、半減期が短い、などの違いがあり、それぞれに応じた対応を行います。

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ホモサピエンスの環境への適応 2015年8月

今月の話題はホモサピエンスの環境への適応です。

@ 赤道から遠ざかるにつれて日射量が少なくなることから肌の色が薄くなる。
A 寒冷地に行くと、手足が短くなり、ずんぐりした体になる。
B 硬いものを食べる人たちは顔つきがごつくなり、軟らかいものを食べる人たちは顔つきが華奢になっていく。

日差しの極めて少ないヨーロッパに行った人たちに求められたのは肌の色でした。
肌の色はメラニン色素の量によって決まります。
メラニン色素は紫外線が体内に侵入するのを防ぐ働きがあり、日光の強い熱帯地方で誕生したホモサピエンスの肌はメラニン色素が多く濃褐色をしていました。
紫外線は皮膚内の細胞に侵入し、遺伝子情報を担うDNAを傷つけるため、日常的に紫外線にさらされていると黒色腫瘍のような癌が引き起こされてしまいます。
濃褐色のメラニン色素が多い人が日射量の少ない土地に行くと紫外線の害は受けない代わりに紫外線による利益も受けられなくなってしまいます。
紫外線により体内で作られるビタミンDが不足してしまいます。ビタミンDは腸でカルシウムを吸収するのに役立っているので、ビタミンDが不足するとカルシウム不足になってしまい、骨の発育が不十分になってしまいます。
ヨーロッパは冬場などはほとんど日が差さないことが多く、肌の色が濃い子供はくる病になる確率が高く、少しでも肌の色が薄い子供が生き残るということが繰り返されました。
ホモサピエンスがヨーロッパの中心に入っていくのに1万年ほどかかりました。この1万年の間にもともとは肌の色が濃く、手足の長いアフリカ人だったホモサピエンスは徐々にヨーロッパの風土に適応してメラニン色素の少ない肌に変わっていったのです。
当時ヨーロッパに住んでいたネアンデルタール人と1万年ほどは共存していましたが、2万8千年前くらいにはネアンデルタール人を絶滅に追い込み、ヨーロッパ人の直系の祖先となったのがクロマニヨン人です。
ヨーロッパ人の顔は彫りが深いのが特徴です。鼻の付け根が窪んでおらず額からそのまま鼻が出ているかに見えるほど鼻梁が高い形です。
彼らは植物が育ちにくい土地柄により、古くから牧畜と農耕(麦)をしており、乳製品や肉、パンなど軟らかいものを食べていました。
そのため咀嚼機関が退化し、頬骨と歯列が引っ込んだ分鼻梁を収めるスペースが出っ張ったため、高い鼻、幅が狭く、上から見ると前後に長い頭の形になっていったのです。
幅の狭い顔形になったため、基本的にヨーロッパ人は前歯が歯列に入りきらず、上顎前突が頻発する結果となりました。ヨーロッパ人から発達した歯科矯正治療の基本治療はいわゆる出っ歯の治療です。
日本人に多い反対咬合はとても少ないことが知られています。

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象の歯 2015年7月

今月の話題は象の歯です。 人間は乳歯から永久歯へ1回だけ生え換わりますが、象は6回歯が生え換わります。第6臼歯が最後の歯になります。第1臼歯は第2乳臼歯、第2臼歯は第3乳臼歯、第3臼歯は第4乳臼歯、第4臼歯は第1大臼歯、第5臼歯は第2大臼歯、第6臼歯は第3大臼歯に相当します。第6臼歯である第3大臼歯は30歳ころから60歳ころまで使われますが、すり減ってダメになるともう食事ができずに象は衰弱死してしまいます。
通常1本ずつのわらじのような形をした平たい臼歯が上下左右にあります。
年齢とともに後方から次の歯が生えてきて交換していきます。
ヒトの歯のように垂直に交換する場合は乳歯が脱落し、その後下から後継歯が生えてきますが、象の場合は後方から生えてくる交換の方法をとるため、歯のない時期はありません。
1本の歯は細長くつぶれた長円形の象牙質の周囲をエナメル質が取り囲み、そのエナメル質の層をセメント質で層板状(ラメラ)に束ねた構造をしています。草や葉をすりつぶして咀嚼すると、歯の咬耗が激しく、すり減りが早いので、人よりも草食獣では歯の長さが長い長冠歯です。
ほとんどの動物では歯が萌出する前にエナメル質の形成は終わっています(短冠歯)。 長冠歯の動物(象、馬、牛など)では歯の萌出後もエナメルの形成が継続し、その後歯根が形成されます。ネズミの切歯、ウサギの臼歯のようにエナメル形成が生涯続く場合は無根歯と言います。長冠歯では歯根がまだできていず、歯周靭帯はエナメル質には接着できないためエナメル質の上にセメント質を形成し、そこに歯周靭帯を埋め込み、歯を顎骨に固定しています。
牛、羊などの進化した草食動物は4つの胃袋を持ち、共生させた腸内細菌で、発酵消化しますので、咀嚼だけに頼らず食物を消化できます。
エナメルもそれほど凹凸はなく、エナメル質を被覆しているセメント質も象や馬に比べると薄くてすみます。
馬、象は発酵タンクを持たないため、咀嚼のみで、草を消化しようとするため、歯に対する負担が大きく、歯が消耗しやすい生物です。象は歯を長持ちさせるために臼歯を24本用意し、そのうち12本は乳歯です。上下左右で1本ずつ使い、60年の生涯、歯を持たせます。馬は小臼歯12本、大臼歯12本を持ちます。24本の歯を一面に並べ、咬合面を広くすることで、長期の使用に耐えるようにしました。歯の大きさと数が大きいため馬の顔はとても長くなりました。
馬の乳歯と永久歯は交換しますが、ほぼ同じ大きさです。
毎年2〜3mm咬耗します。臼歯の長さは6〜8cmです。逆算して馬の寿命は30歳から40歳となります。

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足裏の重心位置・外反母趾・へん平足について 2015年6月

今月の話題は足裏の重心位置です。足裏の重心位置は体重を支えている脛骨(ひざ下には2本の骨があり、脛骨は内側の太い骨のほうです)の直下にあるのが正解です。
土踏まずの後方、やや内側、前後的には内くるぶしの下あたりです。拇指球ではありません。
脛骨は距骨という足首の大きな骨にまたがった形に乗っています。
腓骨(外側の細い方の骨)の下や、小指の付け根の方に重心があると腓骨は弱いため、体重を支えられず変位し、膝の変形や痛みの原因、O脚やがに股の原因になります。拇指球に重心があると、大腿四頭筋の一番外側の外側広筋に力が入り、大腿は肥大します。
大腿四頭筋の裏側を通るラインが本来の重心のラインです。拇指球に重心がある人は、重心が前方にあるために大腿四頭筋で常にブレーキをかけており、筋肉の無駄な動きとエネルギーのロスがあります。
スピードも遅く、余計な筋肉が付くため、そつのない体の動きができません。
スポーツの指導の際にしばしば拇指球で立つとか、足指で地面をつかめとか言いますが、誤解です。
拇趾球が重心に来るのは体全体の重心が前方へ移動してきたときに限られます。
拇趾球で地面を蹴るとスピード゙がつくと考えられがちですが、これも誤りです。
足裏を脛骨直下からつま先までの前方成分と脛骨直下からかかとまでの後方成分に分けて考えたときに、静止位置から前方へ動き出そうとすると、重心は拇指球より後方にあるのが普通ですので、止めていた力を抜き、さらに体重を一時前方へ動かさないと拇指球支点にはならず、動けません。
脛骨直下に重心があればそのまま前に踏み出すことは躊躇なく行え、無駄な動きと時間がありません。
踵に支点を移せば後方成分のモーメントが増えるためさらに素早く力強く動き出せます。無駄のない動きのときは、重心が前方へ移動し、股関節が前方へ移動し、大腿骨が引かれ、脛骨が引かれ、距骨が引き上げられ、踵が上がり、拇指球が地面に接し、最後に拇指球の蹴りあげが起こります。
上体がスピードをもって前方へ動いている時に拇指球のけりが入るため、さらなる加速が起こり、早い無駄のない動きが実現します。
ふくらはぎの筋肉はこの段階で使われるため、それほど強大に付いていなくてもよいことになります。
超一流のアスリートのふくらはぎがそれほど発達していないことがよくあるのはそのためです。
相撲ですり足が大切にされるのも同じ理由で、拇指球で押した場合より、踵を付けた圧力の方が力のモーメントが大きくなるため、はるかに大きな破壊力が生まれるからです。
外反母趾は、距骨や踵骨(かかとの骨)のような大きな骨に体重をかけるべきであるはずが、中足骨あるいは拇指球に体重をかけている時間が長すぎたため、放射状になっている中足骨を支えている筋の疲労が起こり、骨が横に広がることで発症します。
ヒールの高い靴で同じ現象が起こります。
後天的な扁平足も同じで、中足骨が前方へつぶれていくことで、発症します。重心は内くるぶし下にあるのが正しい位置です。

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咬合平面と噛みあわせ 2015年5月

今月の話題は咬合平面と噛みあわせです。矯正歯科ではいろいろなレントゲンを撮りますが、撮ったレントゲンで噛みあわせの機能分析も行います。主に横顔のレントゲンを用います。基準線はいろいろありますが、アキシスオルビタ平面(下顎の回転軸中心と眼窩の最深部をつなげた線)を用います。咬合平面(Gnathological Occlusal Plane下顎前歯切縁と第一大臼歯咬頭頂をつないだ平面)は小さい頃はアキシスオルビタ平面に対して急峻な角度を持っています。後方歯が萌出するに従い下顎骨は歯列の変化に合わせて前下方へ適応移動し、咬合平面の角度は平坦化していきます。最終的には下顎下縁平面(いわゆるアゴのライン)とアキシスオルビタ平面の真ん中に収まります。上顎前突の人はアキシスオルビタ平面に対して咬合平面は急峻になりやすく、下顎前突の人は平坦になりやすい傾向があります。咬合平面は2面性を持つこともあり、前方域と後方域に分けて診断します。重要なのは機能に深く関係する後方域の平面角です。上顎前歯切縁と上顎第2小臼歯咬頭頂を結んだ平面と、上顎第2小臼歯咬頭頂と上顎第二大臼歯または第一大臼歯咬頭頂を結んだ平面です。通常は後方の角度の方が急峻になります。この差が大きい場合は臼歯部の咬頭干渉を疑い、下顎位の近遠心的(前後的)咬合関係の評価を行います。顎関節に対する機能分析も重要です。頭蓋骨にある下顎骨頭が滑る斜面の角度(水平顆路角:Sagital Condylar Inclination)と咬合平面との角度を評価します(相対顆路角:Relative Condylar Inclination)。相対顆路角が小さいと臼歯は離開しにくく、顎が動くときに(滑走時)臼歯部に干渉を生じやすくなります。歯の咬頭傾斜角も考慮に入れます。水平顆路角から咬合平面傾斜角と臼歯咬頭傾斜角をひくことで、臼歯離開角が導かれます。正常な臼歯離開角は8〜13°です。8°以下では干渉の危険性が高くなり、13°以上では臼歯の離開量が増えて咀嚼効率の低下をまねきます(噛みにくくなる)。義歯やかぶせる治療にも応用します。咬合平面が急峻になると相対前方誘導路角(前歯の内側の角度)と相対顆路角は咬頭傾斜角に近づいてくるため臼歯の離開が少なくなります。咬合平面が平坦化すると臼歯離開が大きくなりすぎて咀嚼効率が低下します。歯列の幅が小さくなると、頬側臼歯展開角が小さくなり(抱え込むような形、いわゆる窮屈な噛みあわせ)、咬頭干渉が増大します。抜歯して矯正したときは、いかにこの相対前方誘導路角と頬側臼歯展開角を小さくしないかが焦点となります。

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病巣感染 2015年4月

今月の話題は病巣感染です。病巣感染とは、体のどこかに限局した慢性炎症があり、それ自体はほとんど無症状か軽微ですが、それが原因となって遠隔の諸臓器に反応性の器質的あるいは機能的障害をおこすことです。
扁桃病巣感染が60%、歯性病巣感染が25%といわれています。扁桃が原病巣となるものには、IgA腎症、(紫斑病性腎炎)、掌蹠膿疱症、胸肋鎖骨過形成症の3つが疑われています。
しかし、軽度のIgA腎症でも扁桃摘出単独で寛解する率は約40%、掌蹠膿疱症、胸肋鎖骨過形成症での扁桃摘出単独で寛解する率は約50%です。関連があることはわかっていますが、まだ詳しいことはわかっていない段階です。
二次疾患でのIgA腎症、掌蹠膿疱症、胸肋鎖骨過形成症の3疾患においても、当該部位に病原菌や毒素が検出されるわけではありません。免疫担当細胞の介在による炎症が原因での発症です。
上咽頭炎も病巣感染の原病巣として疑われています。
上咽頭炎はめまい、頭痛、慢性咳、腸障害、肩コリ、うつなどの自律神経調節障害に関連します。
病巣感染では原病巣の慢性炎症が体液性免疫、細胞性免疫の異常を引き起こし、それが二次疾患をおこします。体液性免疫では体の中で抗原抗体反応がおこり、入ってきた異物を攻撃します。この抗原抗体反応により産生された複合体が二次疾患の臓器に沈着し問題を起こします。
慢性腎症では抗原抗体反応複合物の糸球体基底膜への沈着が見られます。
細胞性免疫では、好中球、マクロファージ、キラーT細胞などの実効細胞が二次疾患の部位に誘導され、サイトカインなどを放出することで二次疾患が発症します。体液性免疫が原因の場合は原病巣の除去により二次疾患の原因はなくなりますが、細胞性免疫が原因の場合では、感作されたメモリーT細胞がすでに全身を回っているため、原病巣の除去だけでは二次疾患の寛解に至りません。頻度は細胞性免疫の方が圧倒的に多いといわれています。
歯性病巣感染の原因病巣は歯周病、根尖病巣などです。特に歯周病は成人の80%の人がり患しているといわれ、ここでも歯周病の治療が全身の健康に寄与することがわかります。
最近は歯周病菌がIgA腎症の患者の口蓋扁桃からも検出されることが報告されています。また唾液中の細菌数と種類が健常者に比べて習慣性扁桃炎・IgA腎症の患者では減少していることが報告されています。口腔内常在菌叢の破たんが病巣感染の発症に関与していると思われています。細菌叢破たんの第一の原因は口呼吸であると推測されています。
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インフルエンザとプラーク内細菌 2015年3月

 今月の話題はインフルエンザとプラーク内細菌です。ウイルスの感染には、ウイルス表面の二つのタンパク、ヘマグルチニンとノイラミダーゼが重要な役割を担っています。ヘマグルチニンはウイルスと細胞を結合する(感染)役割があります。インフルエンザは細菌との混合感染や二次感染により重症化します。肺炎球菌や緑膿菌による肺炎や気管支炎をおこし、死亡率が上昇します。
黄色ブドウ球菌が産生するプロテアーゼはヘマグルチニンを活性化しインフルエンザウイルス感染を促進させます。ノイラミダーゼは細胞内で増殖したウイルスを細胞から遊離させる酵素です。唾液やプラーク中にはプラーク内細菌由来のノイラミダーゼ゙活性が認められ、ノイラミダーゼ産生口腔細菌のうち主要プラーク産生構成菌であるストレプトコッカスミティス、オラリスに高いノイラミダーゼ活性が認められました。ウイルス感染実験では、ミティス存在下では28倍、オラリス存在下で21倍と著しく感染が増加しました。ノイラミダーゼ活性のないストレプトコッカスサンギスでは変化がなかったことから、ノイラミダーゼ産生プラーク細菌はウイルスの放出を促進し感染を拡大することがわかります。
ザナビルやオルセタナビルなどの抗インフルエンザ薬はノイラミダーゼの働きを阻害することにより、ウイルスが細胞から遊離することを阻止し、感染拡大を抑制します。ストレプトコッカスミティスとストレプトコッカスオラリスの存在下では彼らの産生するノイラミダーゼにより、薬剤の効果は抑制され、インフルエンザの感染は阻止できません。プラーク主要構成連鎖球菌はウイルスの感染を助長し、重症化すること、さらに抗インフルエンザ薬は口腔連鎖球菌が産生するノイラミダーゼにより薬効がなくなることがわかります。
口腔ケアが不十分な場合は、薬物によるインフルエンザウイルス感染制御は困難です。口腔疾患保有患者の罹患率と死亡率は疾患のない人に比べて2倍から4倍高いという報告もあります。口腔細菌がインフルエンザの病態進行に関与していることが推察されます。
 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)では感染初期を過ぎると長期間にわたる潜伏期間に入ります。この慢性かつ持続的な感染の成立がHIVの特徴で、現在もウイルスを完全に除去することは困難です。AIDS患者においては結核やヘルペスウイルス感染などが発症しますが、口腔内においては重症の歯周病、カンジタ症、アフタ性口内炎が現れます。
歯周病菌であるポロフィロノマスジンジバリス、ヌクレアツムは高濃度に酪酸を産生し、酪酸により潜伏期のHIVが再活性されることが、知られています。酪酸はこの他にも口腔内において歯周病、シェーグレン症候群、関節リウマチ、炎症性腸疾患、上咽頭がん、リンパ腫を誘導します。細胞死の誘導により、局所免疫応答の低下、歯周組織破壊誘導、がん細胞の転移促進、酸化ストレス誘導による細胞破壊などを起こします。腸内環境においては酪酸は多くの有益な作用を持ちますが、口腔内においては様々な為害作用があります。
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顎顔面骨の垂直的高径と上顎骨の成長発育方向 2015年2月

今月の話題は顎顔面骨の垂直的高径と上顎骨の成長発育方向です。従来、上顎骨の成長発育は鼻中隔軟骨の成長により上顎骨が前方へ移動し、できた隙間に骨が添加して移動した隙間が埋まっていくことで成長が進行していくと考えられてきました。
しかし近年、解釈は変わってきています。蝶形骨、後頭骨、鋤骨で構成される脳頭蓋底部は屈曲、伸展の動き方で動いており、この屈曲伸展の動きのどちらが大きく、どちらが小さいかが、上顎骨の成長方向に大きく影響を及ぼしているらしいのです。
屈曲が大きいと、上顎骨を下方へ押し出す力を持ち、伸展が大きいと上顎骨を前方へ押し出す力が大きくなります。頭蓋が屈曲パターンをとる場合は蝶形骨と後頭骨で作られる頭蓋角が小さくなり、頭蓋の前後的大きさが減少し、顎顔面部では上顎骨を下方へ押し出す力がかかり、顔面の垂直的高さが増し、下顎骨の回転による適応が必要になります。同時に側頭骨を外側に回転させながら開大させます。上顎骨が前方へ出てこないため、後方臼歯部の成長が悪く、上顎結節の発育も悪く、大臼歯の萌出余地が不足しがちです。狭いところに無理に大臼歯群が萌出してくることにより、後方の歯が骨ごと挺出し、(歯の押し出し現象)後方の高径が過大になります(下に伸びます)。
咬合平面の後ろが下がることで、咬合平面は水平化することになり、歯列は下顎前突や下顎前突を伴う開咬を呈してくることになります。頭蓋が伸展パターンを示す場合は頭蓋角は開大し、上顎骨は前方へ押し出され、上顎臼歯の高径は増加せずにすみ、咬合平面は水平化せず、逆に急峻な傾斜を作ることになります。側頭骨は内側回転しながら後方位をとるため相対的に下顎骨も後方に位置し、下顎の後退や後退しながらの開咬を作ります。以前からの統計でも、実際の反対咬合の方の頭蓋基底部の角度は122.2°±4.7°上顎前突の方の頭蓋角は128.9°±4.5°正常咬合の方の頭蓋角は124.2±5.2°という計測結果が出ています。下顎前突の方の頭蓋基底骨は小さく屈曲パターンであり、実際に咬合平面は水平になりやすいこと、上顎前突の方の頭蓋基底角は大きく、伸展パターンであり、実際にも咬合平面は急峻になりやすいこととリンクします。このように不正咬合ごとに頭蓋基底角のパターンがあり、それぞれの不正咬合発生の関連性がわかりました。上顎前突の方の場合、上顎の過大成長の場合はあまりなく、上顎前突の80%は下顎後退による相対的な上顎骨の突出であることも以前から知られています。
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りんご病 2015年1月

今月の話題はリンゴ病です。正式な名前は伝染性紅班(でんせんせいこうはん)といいます。
主に、小児に発症します。ほっぺがりんごのように赤くなるのでりんご病と呼ばれます。両側の頬がほてったり、かゆくなります。
ヒトパルボウィルスB19というウィルスによる感染です。レセプターは赤血球膜表面のP抗原で、P抗原保有細胞、特に赤芽球前駆細胞に感染し、増殖します。感染経路は飛沫感染が主で、潜伏期間は6〜11日。発疹までは16〜18日です。発疹が出る1週間から10日前位に発熱、頭痛、筋肉痛、倦怠感がみられることがあります。出ないこともあります。数日で血液中のウィルスが消失し、症状もなくなります。
1週間ほど無症状の時期があり、発疹が出現します。両側のほっぺの発疹から始まり、肩、腕、大腿に赤い平坦な発疹が出現し、その後レース状(網目状)になります。発疹はかゆみを伴うことが多く、通常5〜7日で消えていきますが、日光や運動で刺激されて再出現することもあります。成人では膝の関節痛がみられることがあります。ほとんどは合併症を起こすことなく、自然に治癒します。全身性エリテマトーデス、関節リウマチとの鑑別が必要です。
リンゴ病への治療は特に行われません。自然に治ります。かゆみが強い場合は抗ヒスタミン剤が使われます。頬が赤くなったときはすでに、感染の時期を過ぎているので学校へ行っても大丈夫です。ウィルスが排泄されるのは特徴的な紅班が現れる1週間ほど前までです。免疫のない妊婦に感染した場合は胎盤を介して胎児にも感染します。胎児はウィルスを駆除できず持続感染となり、非免疫性胎児水腫、心不全などの症状をきたすこともあります。時には胎児死亡に至ります。妊娠初期、中期の感染が危険です。感染しても症状の出ないこともあり、妊娠中に上の子が感染した場合は産婦人科医に相談する必要があります。非特異的症状期に本症を診断することはほぼ不可能です。発疹出現後は特徴的な発疹が診断の決め手となります。免疫正常者ではヒトパルボウィルスB19特異的抗体の測定を行います。IgM陽性では現在あるいは近い過去の感染、IgG陽性では過去にヒトパルボウィルスB19に感染し、免疫があることがわかります。抗体産生不全を伴う免疫不全者では、抗体値測定が診断に役立ちません。血中ウィルスDNA解析が必要です。ワクチンはまだありません。
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ソーシャルスキルトレーニング 2014年9月

今月の話題は社会生活訓練(SST social skills training)です。

ソーシャルスキルとは対人関係や集団行動を上手に営んでいくための技能(スキル)のことです。対人場面において、相手に適切に反応するために用いられる言語的、非言語的対人行動を習得する練習のことをソーシャルスキルトレーニングと言います。
ソーシャルスキルは先天的に獲得されている能力ではありません。子供は生まれてから多くの人たちとかかわりながら知識を身に着けていきます。ほとんどの子供は親や周りの人の行動を見聞きしたり、(観察学習)言葉で習ったり、挨拶しなさいなど教示されて、自然に社会生活に必要な行動を習得します。小さな成功体験を積み重ねることで自己肯定感が育ちます。
発達面にアンバランスがある場合はトレーニングが必要なことがあります。

SSTは社会生活を送るために必要な知識や実行を通じて、生活習慣を確立することを目的として行います。
自己肯定感(selfesteem)が高い状態の方が効果が上がります。望ましい行動をほめることが原則です。誉めようと考えたら待たずに秒速でほめることが大事です。望ましくない行動については無視する、切り替える、場合によってはタイムアウトする(その場で怒らず、その現場から引き離し、立たせるなど一定時間反省させ、頭を冷やしてから納得いくように教える)。基本は望ましくない行動、大人の注意をひきたい行動に対して、注意引きに反応するのではなく、別の行動の支持を出して、望ましい行動に誘導します。誉める場合も切り替える場合も急ぎません。

SSTで扱う社会生活技能は3つの構成要素からなります。
【ア】社会知覚能力(適切な現状把握)
【イ】社会的問題解決能力(状況に応じた判断)
【ウ】適応行動能力(選択した行動を計画的に実行)です。
実際の基本訓練の流れは以下です。
@問題場面の設定、教示:本人から練習したい課題を出してもらう。そのスキルがなぜ必要か教える。
Aロールプレイ:本人がロールプレイで課題場面を実演する。
B正のフィードバック(ほめる):視線、声の大きさなど対人技能で大切なポイントを押さえつつ、良かった点をフィードバックする。
C矯正的なフィードバック(修正案):どうやったらもっと良くなるか、改善点を提案する。
D見本のロールプレイ(モデリング):指導者または、メンバーの中でスキルの高い人が修正案を盛り込んだロールプレイを行う。不適切な振舞いを見せてどこに間違いがあるかを考えさせる。
Eリハーサル、新しい行動のロールプレイ(再演)モデリングを踏まえ、修正案を盛り込んだロールプレイを本人が再度行う。
F正のフィードバック(ほめる):再演に対してよかった点をフィードバックする。
G宿題の設定、般化:練習したスキルを実際の生活場面で本人に使ってもらえるような設定にする。指導場面以外でも発揮できるようにする。般化とスキルの定着を行う。
成長の過程で身についていない場合は意図して訓練する必要があります。

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あごのずれと生活習慣 2010年10月

今月の話題はあごのずれと生活習慣です。あごのずれは生活習慣が原因である場合があります。
あごのずれは、噛み合わせのずれ、不正咬合、あごの変形、顔のゆがみの原因になり、さらに視力、聴力の衰え、斜頚、肩の高さの差、背骨のゆがみ、骨盤のゆがみなど、その影響は体全体に及びます。これらは頭痛、肩こり、腰痛、疲れやすい、だるい、根気が続かないなどの原因となります。さまざまな病気の誘因ともなります。特に痛みなどがあるわけではないですし、いつの間にかそうなっていたといった発現の仕方をするため、歯科医師に指摘されるまでは気にもしないことが多いものです。
中学一年生470人を対象に調べた統計では、470人中108名(23%)に2mm以上のずれがありました。このグループの人たちを調べたところ、84.3%に横寝、うつぶせ寝の習慣がありました。ずれのない人たちでは、横寝、うつぶせ寝は70.4%でした。これだけの差がでるのは、統計的に100分の一以下の確率です。あごのずれと横寝、うつぶせ寝には関連があることがわかりました。
横寝、うつぶせ寝の圧迫側の顎関節は機能異常が多く、カクカク音がしたり、痛みが出たりしやすく、その意味でも横寝、うつぶせ寝はよくありません。また、頬づえなどの癖もあごのずれを起こします。左右の骨盤の高さを比べてみて、高いほうの側の、上の歯の最もうしろの奥歯は噛み癖から外に押し出されることが多く、ともすると下の奥歯とすれ違ってしまう噛み合わせになります。このようなすれ違いのかみ合わせが起こると顎は歯が原因で、ずれてしまいます。足を組む癖があった場合、組み足と反対側にあごがずれることもよくあることです。
あごのずれが、歯が原因となっている場合は、矯正歯科治療でずれを治すことができます。生活習慣が原因の場合は、その癖を直さないとずれは治りません。
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“オクルーザー” 2010年9月

今月の話題は、噛み合うときの力の入り方、大きさを読み取るコンピューター計測装置“オクルーザー”です。咬合に関する良くない力は頭痛や肩こり、全身の疲れなど全身的な影響を体に及ぼします。体は、使い方(機能)の変化に応じて、形が変化(リモデリング)します。形の変化があると、体の機能が変わります。矯正で歯列を整えるとよい噛み方に変わり、体が楽になるのはそのためです。
オクルーザーの検査結果には、咬合面積、咬合力の二つの数値があります。咬合面積の標準は10〜20mu、咬合力の標準は体重の10倍です。50Kgの人であれば500N(ニュートン)が目安です。
先月計測した10歳の女の子では面積15.5mu、咬合力510.8Nでした。面積の数字は良くても実は奥歯しか当たっておらずその当たったひとつひとつの点も非常に大きいものでした。これは普段から歯と歯を噛んでいる癖があり、歯が磨り減り、点接触ではなく面で接触し始めた証拠です。体重も28Kgということで、510Nという咬合力は強すぎ、力の制御が出来ていないことがわかります。レントゲン検査では、アゴのえらの骨が増殖していました。いつも筋肉に力が入っているためです。顎関節の骨は噛みしめによる圧迫により、太くて短い形でした。歯列の形態もきゅうくつな噛み合わせでした。きゅうくつな噛み合わせは噛む位置に遊びがなく、ピンポイントでしか噛めないため、かみ締め癖を誘発します。グラビコーダー(動揺度計)による体の揺れもとても大きなものでした。噛み合わせが不安定なため、アゴが体のバランスをとれていないのです。検査結果はすべて癖で噛みしめていることによる悪い結果を示唆していました。歯のもちを良くするためにも、体の負担を減らすためにも、これらの数値を適正な数値に変える必要があります。矯正治療で形態を変え、その結果として機能が変わり、数値が良くなることを目指します。もちろんご自分でもかみしめている癖をやめる努力をしないといけません。
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睡眠時無呼吸症候群 2010年8月

今月の話題は睡眠時無呼吸症候群です。睡眠時無呼吸症候群とは睡眠時、10秒以上の呼吸停止が1時間当たり5回以上、もしくは7時間以上の睡眠時中に30回以上起こることを言います。ヒトは深い睡眠がないと、免疫力が低下し、成長ホルモンの分泌が通常の30%にまで減少してしまいます。成長ホルモンは脂肪を分解し、筋肉を増強する作用をします。子供の場合は不足すると成長障害になります。寝言が多くなり、徘徊、夜尿も多くなります。昼間も、活動性が低く、集中力が散漫、やる気が起こりません。学業成績の低下、体がだるい、夜驚症や自律神経失調症で精神安定剤を処方されていたケースもあります。無呼吸のとき、体は酸欠状態になり、なんとか酸素を送ろうとするため、心拍数は増え、スポーツ中のように激しく変動します。高血圧、狭心症、心不全、不整脈の原因である心房細動が起こることもあります。血栓ができやすくなり、心筋梗塞、脳梗塞の原因となります。スリーマイル島原発事故、スペースシャトルチャレンジャーの爆発事故、チェルノブイリ原発事故、などは睡眠不足による人為事故であることが明らかにされています。
睡眠時無呼吸症候群は、あごの小さい人や、肥満で舌が肥大しているなど、舌が口の中に入りきらず、のどの後方へ落ち込み、気道を圧迫することが原因です。現在、子供たちに睡眠時無呼吸症候群が増えているのは、小さなアゴ、未発育なアゴの子供が増えているからです。不登校、ひきこもり、小児肥満、情緒不安定、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの子供は無呼吸症を疑ってみるべきといわれています。いびきをかく子はADHDになる確率が通常より4倍高くなります。山下矯正歯科での基本治療である、あごの幅を広げること、あごの奥行きを作ることは、舌の居場所を作ることになり、睡眠時無呼吸症候群の予防となります。アメリカでは矯正治療を子供のころにしたかどうかが発症のリスクを左右すると考えられています。舌の入る空間を増やし、舌の位置を後方から前方へ変えることが、睡眠時無呼吸症候群を予防します。
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バイオフィルムの除去 2010年7月

今月の話題は、来院のたびに行っている、回転器具によるバイオフィルムの除去です。以前は、フッ素を塗り、ハブラシ練習を行い、あとは、各自で磨いていただき、汚れの落ちない方はお母さんに磨いてもらっていました。(今でも基本は同じです。)中学生以上で磨き残しの多い方は、1〜2週間ごとに歯ブラシの練習のためだけに来院してもらったりしていました。それでも虫歯は発生し、歯周病は進行しました。予防を、完全に行えるとは歯科医側も思っていませんでした。
その後、バイオフィルムの性質がわかり始め、回転器具でしか除去できないバイオフィルムの除去を、定期的に行うことが、とても効果があることがわかりました。バイオフィルムは歯科大学の学生でさえ、歯垢染色剤で染色されなくなるまで除去しきるには、4時間もかかります。さらに再石灰化を促進するさまざまな薬剤が商品化し、白濁や、虫歯の原因となる歯のごく小さな傷も再石灰化(修復)が可能となりました。口の中の細菌の種類や量の検査もできるようになりました。
今では1〜4ヶ月毎に歯科医院に通院して、口腔内のメンテナンス、クリーニング(デブライトメントまたはPMTCなど)を行うことが、歯のもちを良くし、体の健康の維持、自己免疫力の増強、寝たきり老人を作らない、国の医療費の削減につながることが世界的に知られています。歯科の先進国であるスウェーデンでは国の政策で、歯科の予防が国費で行われ、大きな成果を挙げています。日本では、バイオフィルムの除去などの定期的な予防処置は自費になります。
矯正治療中は1ヶ月に一度、そのような意味での清掃が行われるため、普通に歯ブラシをしていればよい状態を保てますが、矯正が終了して通院がとびとびのメンテナンスに入り、クリーニングの回数が少なくなると、とたんに新たな虫歯を作ってしまう方がいます。気をつけましょう。
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傷の治療方法 2010年6月

今月の話題は傷の治療方法です。今、傷の治し方は根本的な改革が進められています。これまで傷は、濡れないようにできるだけ乾燥させて治癒を待ちました。お風呂などで、濡れないように、ヨードチンキで消毒した指の傷を、ずっと上に持ち上げていましたよね。実は、乾かないように、浸潤状態を保つほうが、じくじくしたままでいさせた方が、治りが速やかであることがわかったのです。傷の治し方の3原則は@傷には絶対に消毒剤をつけない。A傷は水道水でよく洗う。B傷は決して乾かさない、です。
@消毒剤は細胞毒性により、治るための修復細胞さえも殺してしまいます。反対に皮膚上の常在菌は完全には滅菌できず、一時的に菌数が少なくなっても、2時間もすれば菌数は戻ってしまい、何にもならないこと、菌がいても(MRSAでさえ)、化膿するか、化膿しないかは壊死組織の存在が決めていることがわかりました。消毒は味方を傷つけていただけだったということです。海外ではインスリンの自己注射もアルコール消毒などせず、下着の上から直接針を刺すことが常識になっています。必要な消毒と、不必要で害のある消毒を、区別しないといけなくなりました。A水道水中の菌数はとても少ないことから、日本以外のほとんど国では、洗浄に水道水を使い、生理食塩水などの滅菌水は使っていません。大量の水道水で洗うことのほうがはるかに菌数を減らせます。細かな異物の除去にも効果的です。B細胞を再生させるためにはシャーレの中のような湿った環境が必要です。口の中の傷は治りやすいのも同じ理由です。口呼吸では治癒が遅くなります。ガーゼなどを使うとガーゼから水分が蒸発し、乾燥が進みます。無理にガーゼ交換するとせっかく増殖した修復細胞が剥ぎ取られてしまいます。ガーゼは百害あって一利なしということです。
注目されているのは食品ラップを使ったラップ療法です。傷を水道水でよく洗い、消毒せずに、上からラップで保護します。安価で、傷の治りがとてもよいことが注目されています。褥瘡の治療でも有効でした。
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歯列の幅 2010年5月

今月の話題は歯列の幅です。歯型を見ると、右と左の歯列の幅が違っていることがよくあります。以前お話した態癖により、右側、または左側、あるいは両側とも歯が内側に倒れていることが多いのです。両側とも倒れているときも、左右で程度が違うことがほとんどです。山下矯正歯科では基本的に拡大治療を行って、内側に押されて倒れている歯を、本来の角度にまで起こし上げてから、次の治療に進みます。そのとき、歯列を単純に左右に拡大すると、その左右差をさらに大きくすることがあります。狭いほうが広くならず、広いほうがさらに広くなってしまいます。それは狭い側に、広がる力を押さえる態癖があるときです。さまざまな方法を使って、動きの悪いほうに力を集中するようにします。それでも動いてほしい側は動きが芳しくなく、動いてほしくない側が動いてしまうといったジレンマに陥ります。本人が持っている態癖をなくさないと解決しませんし、治りません。本人が気付いて態癖をやめればすぐに左右対称になります。
先日、遠方から矯正相談に来られた方がいました。矯正治療をしたのだけれど、噛む場所がわからないというご相談でした。歯並びはきれいでした。しかし、きれいに噛み合う位置と本来噛むべき位置が違っていました。お顔の形も非対称でした。アゴも動かすとカクカク鳴ります。原因は矯正治療中にひどい態癖を続けていたためでした。態癖のために上下のアゴが一体となってずれ、ずれたアゴにきれいな歯並びが出来上がったのでした。上顎下顎の真ん中もあっています。でも噛めません。アゴを横にずらすと楽だと本人も感じていました。ずらした位置が、その方の正しいアゴの位置でした。正しいアゴの位置で、噛み合う歯並びであるべきでしょう。足をくじいただけでもかみ合わせは変わります。しかし、態癖はアゴをその何倍も大きく変形させ、移動させるため、影響が大きいのです。矯正治療中に態癖をやめていれば、このようなことにはならなかったでしょう。お顔には手、ひじ、枕など、少しの間も触らないように気をつけましょう。
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噛み合わせと体調 2010年5月

今月の話題は噛み合わせと体調です。4月の初診の方の中に、矯正治療で体調を壊したという相談で、遠方から来院された方(Aさん)がいました。
その方の矯正治療前と治療後のお顔の写真を比べたところ、治療後のお顔は長さが短くなり、鼻下から顎先(オトガイ)の距離が非常に短くなっていました。
上の前歯を極端に大きく引き込んでおり、下顎の位置は上の前歯の移動とともに後ろの方へ移動していました。体調不良、体調好調にはパターンがあり、その方の前の状態からの変化を見ると体調の変化もおおよそ推理できます。
体のどの辺に不調、好調が起こるかも推理できます。学術的には噛み合わせと体調の関連性は証明されていません。
矯正治療と体調不良、体調好調の関連性も証明されていません。しかし、山下矯正歯科では矯正治療が進むにつれて体調がよくなったというお話はごく普通にあり、お母様方と私の間でよく交わされる話題です。私の矯正治療のモットーは“元気になる矯正治療”です。
下顎は後退すればするほど身体への負担を増やします。下顎にわずかでも力の入っている方は、筋肉の走行方向の関係で、下顎をどうしても後方へ移動させてしまいます。下顎は身体の重心を取っていますので、噛み締めている癖のある人はその顎の機能を止めてしまっていることにもなります。
Aさんは無意識に噛みこんでいる癖があり、私がそのことを指摘しても理解できないようでした。噛み合わせを、Aさんの適正と思われる位置(リラックスポジション)にして、腕の力を試すと、本人もびっくりするくらい力が入りました。このようなことも学術的には証明されていません。
しかし、現実にはよくあることで、研究が臨床に追いついていない分野です。このように日常生活で無意識に行っていることで、思わぬ変化を招くことがあります。
Aさんは矯正治療を行いながら、極端な態癖を続けたため、下顎の位置が変化し、体調不良が起こったのでしょう。いろいろなことが重なり合って、通常は起こらないでいることが起こってしまうことがあり、やっていいこと、悪いことを知っている、いないは大きな違いとなります。
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体の動揺 2010年4月

今月の話題は体の動揺です。ヒトが二本足で立っているとき体は常に揺れています。自動制御の結果として小さく揺れながら、安定しています。二足歩行のできる人型ロボットのアシモは揺れませんが、2本足で立つために、常に中腰です。中腰でいることは、ヒトでいうといつも筋肉が緊張状態にあります。力で支えているため、見ているだけで力が入り、違和感があります。ヒトは力で支える構造ではなく、螺旋構造、すり鉢構造で、重力を利用して、五重塔のように自動的に慣性平衡系で、意識することなくバランスをとっています。あの阪神淡路大震災のときも、コンクリートのビルは倒壊しても木造の五重塔はひとつも倒れませんでした。力で支えることは体にとっても効率が悪く、とても負担のかかることです。
重心動揺計で測ると、筋肉骨格の発達した大人の男性では重心のゆれは少なく、子供さんや、女性では揺れが大きく出ます。目を開けているときは揺れは小さく、目を閉じると、揺れは大きくなります。目を開けているときは周りの景色により、ゆれを制御していますが、目を閉じてしまうと制御できません。目を閉じるとこんなにも揺れているのかと皆さん驚かれます。歯並びが狭い方、はまり込んだ噛み合わせをしている人、アゴがずれている人、いつも歯をかみ合わせている癖のある人では、目を閉じると揺れが大きく出ます。周りの景色を見て、筋肉で一生懸命に支えていたからです。噛み合わせが安定してくると、動揺も小さくなるのが普通です。アゴが体のバランスをとっているからです。それは体を前に傾けると前歯が当たり、体を後傾させると奥歯があたることからもわかります。アゴは自動的に体のバランスをとっています。
本来バランスは自動制御の中にあり、筋肉で行うものではありません。それを常に筋肉で行わなければならないことは体にとってはとても負担なことであり、人が生きていくうえで余裕がなくなることになり、落ち着いた思考ができないことに繋がります。ここにも噛み合わせの役割があります。
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反対咬合の治療方法 2010年4月

今月の話題は反対咬合の治療方法です。小児期の治療で一度反対咬合が治っても、遺伝的な問題を強く持っていると、成長とともに下顎の過成長がおこり、反対咬合が再発することがあります。仮性の反対咬合でも放置すると真性のものになってしまいますので、小児期の治療はとても大事です。おおむね反対咬合の治療では、下顎の成長が一段落する時期まで待ってから、針金の矯正に入ります。7歳から15歳の成長分析の結果、その方の成長が終了した時点で反対咬合にまたなるかどうかは、成長期のうちからは予測できないことが判明しました。
小児期の反対咬合の治り方で、再発後の治療の難易度が変わります。小児期の反対咬合の治り方は2パターンに分かれます。@下顎前歯が内側へ傾斜し上顎前歯が前方へ傾斜し、互いに歯の傾きが変わって治るパターン。(前歯の角度が変わって治る)A下顎の歯並び全体が後方へ動き、上顎の歯並び全体が前方へ移動して噛み合わせが治るパターン。通常の反対咬合の治療方法で前歯の噛みあわせが治るときには、上下前歯の“角度”が変化して治るパターンの貢献度が大です。上顎の前方移動と下顎の後方移動により治る貢献度は小です。その後の下顎骨の成長で(レイトグロス)反対咬合が再発すると、上顎前歯はすでに程度の差こそあれ、前方へ傾斜しており、下顎前歯は内側へ傾斜しているので、歯を傾斜させる治療方法には限度があります。限られた範囲で前歯を傾斜させて対応するか、角度で治すにはあまりに上顎下顎の差が大きい場合は手術に頼ることになります。
Aのパターンで大部分が治る方法として、イタリアのナポリ大学で研究開発されたSECVという方法があります。これはS:スプリント、E:エラスティック(ゴム)C:チンキャップを使った治療方法です。骨格性の要素が強いと思われる反対咬合の人を、小児期にSECVで治療し、25年後の状態を調べたところ、52人中46名が正常咬合を維持していました。再発していたのは6名でした。再発しても、今度は角度で治す方法が使えます。山下矯正歯科では、難易度の高い骨格性(真性)の反対咬合の人にはSECVを提案しています。
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態癖 2010年3月

今月の話題は態癖です。態癖とは日常の生活習慣の中で無意識に行っている癖をいいます。この癖が大きな影響を体に与えています。歯科で特に気をつけるべき態癖は頬杖と睡眠時の癖です。
歯並びを見ると、でこぼこであったり、V字型であったりしますが、全く法則性もない、でたらめな歯並びになっていることはありません。丸いお椀のようなU字型を正常な形として、そこから粘土細工のように指で圧迫すれば、簡単にその形が自分でも作れそうな形であることがほとんどです。そのような規則性を持った変化が、実は実際の歯並びにも起こっていることがわかっています。その主な原因が態癖です。
骨はわずか5グラムの力でも、長時間かかると変形します。頬杖でかかる力はもっと大きな力です。そのため、顔は簡単に右に左にゆがんでしまいます。歯並びも、アゴも、変形させられます。歯並びの左右どちらの側に八重歯ができたか、でこぼこがどこにできたか、受け口でなく上の前歯が出てきたのはなぜか?ほとんど原因が類推できます。本を読んでいるとき、パソコンをしているとき、勉強をしているとき、テレビを見ているとき、頬杖はついていませんか?片手でやっていますか?交互にやりますか?両手でやっていますか?寝床で本を読んでいませんか?出っ歯になってしまいます。寝そべって本を読んだり、テレビを見たりしていませんか?体育座りでアゴをひざに乗せていませんか?もしやっていたら今すぐやめましょう。
寝ているときは横寝ですか?うつぶせ寝ですか?両方だめです。頭は4キロから5キロ以上あります。この重みが8時間もかかると確実にアゴも歯列も変形します。ぐるぐる回るから大丈夫と思っていませんか?多方向から変形力がかかります。逆方向でも相殺することはありません。枕はどこにありますか?あごが枕に押し付けられていませんか?寝ているときに手が顔にさわっていませんか?手の重みだけで歯並びは変わります。圧迫が関節であれば顎関節症を誘発します。さらに顔の変形は体の変形も誘発します。
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インフルエンザ 2010年2月

今月の話題はインフルエンザです。現在流行しているインフルエンザはA香港型が41%、Aソ連型が45%、B型が14%の流行状態です。すでに昨年を上回る感染が報告されています。インフルエンザは感染すると1〜2日の潜伏期間を経て高熱と様々な全身症状が4〜6日続きます。発症は突然で、急激に38度〜40度まで上がり、そのまま高熱が持続します。3日目くらいに一時解熱し、その後24時間以内に再び急激に発熱する2峰性を示すこともあります。診断は簡便なキットがあり、15分ほどでA型B型を診断できます。
治療は抗ウィルス薬によるウィルス増殖の抑制です。ウィルス感染後増殖のピークとなる48時間以内に服用を開始しないと効果がありません。オセルタミビル(タミフル?内服)やザナミビル(リレンザ?吸入)が一般に投与されます。リレンザは吸入が難しいということで5歳以下では適応ではありません。タミフルは特異行動発生報告により、10歳から20歳までは使用制限になっています。いずれは治る病気であるため、また、薬剤にはさまざまなことがあるので、最近は薬剤を使わず、体力の回復に専念するというお母さんも多いようです。2001年まではこれらの薬は保険外で、使用はほとんどなかったことを考えると、ある医師は、熱が1日〜2日長く続くことを覚悟すれば、使用しなくてもいいのではないかと言っています。
脱水を防ぐため水分や一口大の氷をこまめに摂取するのがよいでしょう。一般解熱剤はインフルエンザ脳症との関連があるため、アセトアミノフェン(カロナール?等)のみ処方されますが、安易な解熱剤の服用は避けるべきです。氷のうを活用することが最も安全で効果的です。冷却シップは有効ではありません。
予防はマスクの着用、手洗い、うがい(当院のEO水はおススメです。効力は1週間ですが‥)を励行すること、が第一で、睡眠不足などないように、体力を落とさないようにすることが基本です。
ワクチンは鶏卵から作られるため鶏卵アレルギーのある場合は、接種には医師との検討が必要です。
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次亜塩素酸水 2010年2月

今月の話題はもう一度次亜塩素酸水です。前回ご紹介しましたように次亜塩素酸水はほとんどの細菌、ウィルスを瞬時に溶菌することが出来、さらに人体にとても安全な水です。歯科では歯周病の治療に応用されています。去年、テレビ「夢の扉」で紹介されたパーフェクトペリオ水はその仲間です。山下矯正歯科は、この高濃度次亜塩素酸水を使った口腔内の機械的洗浄を、虫歯予防、歯周病予防として採用しました。
超酸性水では殺菌はできても、内毒素の分解までは出来ません。菌は死滅していても、内毒素がある限り歯肉炎、歯周病は止まることなく進行し続けます。その理由は、虫歯菌や歯周病菌を分解するマクロファージ、骨を壊す破骨細胞はすべてTLR4というレセプターを持ち、菌の内毒素に反応するからです。菌の生き死に反応するものではありません。殺菌しても、歯根表面、歯肉内縁上皮には内毒素が残存していてTLR4のレセプターが感知すると、敵がまだ残っていると思ってマクロファージは炎症性サイトカインを多量に放出し続けます。破骨細胞は歯槽骨を破壊し続け、マクロファージの放出するインターロイキン1がさらに破骨細胞の活動を促進します。内毒素の感染によりリンパ球の増殖が起こり、V型アレルギーによる組織障害も誘発されます。次亜塩素酸水は耐性菌を作ることなく内毒素も含めて溶菌するため、虫歯、歯周病の根治治療に絶大な効果があります。抗生剤のような環境汚染もしません。抗生剤の環境汚染は現在大問題です。
次亜塩素酸水は冷蔵庫で7ヶ月持ちます。ご家庭での使い方は、通常のブラッシングでよく歯や歯肉の汚れを落としてから、洗口します。矯正治療中のように汚れが多く、つきやすい場合は80ppmから150ppmくらいに薄め、30秒ほどゆすぐのが良いでしょう。10℃温度が上がると除菌力は2.5倍になりますので、お湯で希釈し、40℃程で使用すると効果的です。歯科医院の治療台で行う高濃度次亜塩素酸水による口の中の機械的洗浄は歯周病、歯肉炎、う蝕の予防に最も効果的です。
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共食(きょうしょく) 2010年1月

今月の話題は共食(きょうしょく)です。人は生きていくために食べ物(栄養素)を体に取り込まないといけませんが、人は単純に食べるのではなく、持ち帰り、仲間と一緒に食べるということをします。
最近の傾向として、一人で朝食や夕食をとる子供が増えてきていることが、知られています。小学生の40%以上が一人で朝食を食べています。一人で食べる食事を孤食と呼んでいます。お母さんは食べさせている間に仕事に行くか、忙しく家事をしているのでしょう。同じ食卓を囲んでいても一人ひとりが違うものを食べていることは個食といいます。お父さんはとんかつを食べ、子供はスパゲッティを食べているなどです。
統計では、孤食の場合食事量が少なくなります。孤食でない方が、食事量は多くなります。親密な人と一緒であれば食事のおいしさも向上しますので、栄養の取り込み率も、よくなります。
人のような雑食性の動物には新しい食べ物に対して、食べることを躊躇させる本能があります。害のない食物を取り入れることが必要だからです。これを新奇性恐怖と言います。その食物が食べられるものであるかどうかは食べてみないとわからないのですが、一緒に食べている人が食べれば、食べることができるものと判断できますし、親しい人であればあるほど安心して食べることができます。子供に直して考えると、新奇性恐怖は好き嫌い、食わず嫌いに発展します。
懇親会や、歓迎会などで一緒に食事をとると、お互いの親密度が増します。恋人とのデートでは必ず食事が重要な要素となります。お祭りや、季節の行事すべてに、一緒に物を食べることが含まれています。一緒に物を食べるということは人と人のつながりを保ち、一体感を育て、さらには社会の潤滑にもなっていることがうかがえます。その人の社会的な成熟性も培われていくことでしょう。忙しい時代ですが、意図的に家族一緒に同じものを食べる、そして、その時間を作ることはとても意義のあることと考えられています。
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次亜塩素酸水 2010年1月

今月の話題は次亜塩素酸水です。次亜塩素酸は厚生省認可の食品添加物です。環境・人体にまったく無害な除菌薬です。次亜塩素酸は人体内でも産生されており、細菌などの異物を分解する重要な役割を担っています。血液成分である好中球には、ミエロパーオキシダーゼという酵素が大量に存在し、この酵素が次亜塩素酸を作り出し、異物除去を行っています。
次亜塩素酸は雑菌に接触すると瞬時に除菌し、普通の水に戻ります。同時に優れた消臭力も発揮します。EO水と比べてもその殺菌力は同等な力を持ち、さらに多くの利点を持っています。EO水は超酸性ですので金属をさびさせる副作用がありますが、次亜塩素酸水は中性に近い弱酸性ですので金属をさびさせません。EO水は細菌の菌体を爆発させて殺菌しますが、菌体の毒素(菌体内毒素、菌体外毒素)はそのままにあるため、毒素による影響は毒素が物理的に排除されない限り続きます。次亜塩素酸水は菌体内毒素、菌体外毒素をも分解します。アレルギーなどの発生源の除去にも有効です。花粉なども取り込みます。バイオフィルムの破壊も行います。
山下矯正歯科ではこの次亜塩素酸水の噴霧器を待合室に設置しました。超音波噴霧器は次亜塩素酸水を3mμの小さな粒子にし(ドライミスト)、このミストは2時間程度空中で漂い、空気の流れに乗って拡散し、院内全体の除菌と加湿を行います。ミストはマイナスに帯電し、滝つぼ付近の爽やかさを作ります。(レナード効果)インフルエンザ予防にも効果があります。次亜塩素酸の噴霧は、ホテルのロビー、客室、病院の待合室、病室、診察室、オペ室、介護施設、幼児施設、動物病院、養鶏場、養豚場など、広く行われています。食品製造業や水産加工業などでも、食中毒予防対策として使われています。
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金属アレルギー 2009年12月

今月の話題は金属アレルギーです。汗などでイオン化された金属が、タンパク質と結合し、表皮のランゲルハンス細胞がこれと複合体を作り、抗原特異的T細胞が作られます。(感作)再びイオン化した金属が体内に入ると抗原抗体反応を起こし、アレルゲンをつけた表皮細胞を殺すためサイトカインが放出され、細胞を液化し、その部が小水泡になり、痒くなり、掻くことで、破れ、アレルゲンともども体外に排出します。こうして体からアレルゲンを排出するのですが、同時にサイトカインによってびらんなど皮膚炎が発生します。原因としては洗剤や化粧品、ネックレス、時計の革バンド(クロムのなめし)、ボタンなど多くの日用品が原因になります。チョコレートアレルギーや、カカオアレルギーが重なることもあります。
歯科の詰め物による金属アレルギーでは、パッチテスト、蛍光X線分析装置による金属の分析など慎重な検査を行った後、当該金属の除去が行われます。金属を除去することで治癒する率は治療後2年の判定で50%から60%です。歯科金属でアレルギーを起こすものは水銀、ニッケル、クロム、コバルト、パラジウム、金、白金、錫、亜鉛、銅、アンチモン、チタンなど多岐に渡ります。
歯科金属アレルギーで有名なのは掌蹠膿疱症です。手掌足底に小水泡を多発します。鱗屑(りんせつ)が固く、痂皮が付着します。通常はステロイド剤で治療します。難治性のものは口蓋扁桃の細菌感染が原因していることも多く、口蓋扁桃の切除で、80%が治癒ないし改善します。C型肝炎がアジュバンド(アレルギーを助長する物質)となっていることもあります。扁平苔癬、汎発性湿疹、舌炎、歯肉炎、口唇炎、口内炎も歯科金属が関与していることがあります。
水銀系の消毒剤であるマーキュロクロム(赤チン)やアマルガムは現在ほとんど使われていないので、水銀の金属アレルギーは感作の機会が少なく、以前と比べて減っています。
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睡眠 2009年12月

今月の話題は睡眠です。富山大学の10年間の調査では3歳のときに睡眠時間が9時間以下だった子供は11時間以上寝ていた子どもに比べて1.6倍肥満になる確率が高まっていました。別な調査で、20代の健康な男性で、1日に4時間の睡眠のときは10時間の睡眠のときと比べて、脂肪細胞から分泌されるレプチン(食欲を抑制し代謝を促進する)の血中濃度が18%減少し、胃から分泌されるグレリン(食欲を亢進する)の血中濃度が28%増えていました。睡眠不足では肥満が誘導されやすいと考えられます。
睡眠不足の症状は、目覚めが遅く、無理に起こさなければ起きない、いつでも寝られる、昼間元気がなく2時間以上の長い昼寝をする、眠る時間が遅い、一晩中にわたるいびき、なかには無呼吸になっていたりします。無呼吸は、いびきをかいているときに、胸が呼吸に伴ってへこむことで確認します。夜中に何度も目を覚ましたり、大人でも尿が漏れたり、子供さんではおねしょをしたりします。すぐに怒ったり、攻撃的になることもあります。漏斗胸も関連があるようです。あまりに肥大した扁桃が原因である場合は、扁桃を耳鼻科でとることも選択の一つです。とってから4ヵ月後に、身長が4センチ、体重が4キロも増え、元気になった例もあります。睡眠障害は予想外のマイナスになっていることがあります。
寝ているときにいびきなどで、苦しい呼吸をしていると、深い睡眠がとれず、成長ホルモンの分泌が十分でなくなります。成長ホルモンは大人でも寝入りばなに集中して大量に分泌されます。交代勤務でよく眠れない人たちや、夜勤で睡眠不足のときに胃腸障害が多いのは、睡眠不足で、消化管粘膜の修復がなされないからです。肌につやがないのも成長ホルモンの分泌が十分でないときです。皮膚の細胞が分裂新生しないからです。成長ホルモンは、長く寝ていれば分泌されるものではありません。寝始めの深い睡眠が必要です。睡眠は脳や身体を休ませているだけではなく記憶を整理したり、体の修復をする時間でもあります。
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アスピリン 2009年11月

今月の話題はアスピリンです。ヒポクラテスのころから柳の葉に鎮痛効果があることが知られていました。柳からアスピリンは分離され、解熱鎮痛剤として用いられてきました。近年、実はそれ以外のさまざまな効果があることがわかりました。それはEPA、DHAのように血液をさらさらにして、心臓発作や、脳卒中の予防(2000年)ができることや、肺ガン、大腸ガンの予防です。
発熱、炎症のときは、脂肪からプロスタグラジンH2が作り出されます。プロスタグラジンH2から、プロスタサイクリン(血液凝固阻止作用)トロンボキサンA2(血小板凝集作用)プロスタグラジンE2(発熱、炎症作用)が作られます。アスピリンはこの大元のプロスタグラジンH2が産生されることを阻害し、その先でできるプロスタグラジンE2を作らせないようにして発熱、炎症を止めます。
ここで面白いのはアスピリンを大目に飲むと熱を下げ、痛みをとる効果(特にリウマチに効果)があるのですが、少量飲むと、熱は下がらないけれども血液凝固を防ぐ効果があることがわかりました。少量服用の場合のみトロンボキサンA2産生を阻害するのです。熱さましには1錠丸々飲む必要があるのですが、血液凝固予防にはその3分の1を飲むことが有効であることがわかりました。血が固まりづらくなるため、脳卒中と心臓発作を47%減少させることがわかりました。飲む量によって発現効果が違うのです。これをアスピリンジレンマといいます。アメリカのお医者の多くが毎日少量のアスピリンを飲んでいるそうです。
ごく最近ではアスピリンの少量投与は肺ガンを43%減少させ、大腸ガンを40%減らす効果があることが報告されています。アスピリンには胃障害(胃酸分泌制御、胃粘膜保護低下)の副作用があります。バファリンはアスピリンを制酸剤ダイアルミネートで包んだものです。小児のインフルエンザや水疱瘡ではライ症候群(高熱と吐き気、痙攣などの症状)が発生することがあり、この場合の投与は禁忌です。
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電磁波 2009年10月

今月の話題は電磁波です。ご承知のように電磁波はガンの発生原因となります。あらゆる電化製品から出ていますが、特に寝室の電化製品は問題です。一日のうちの長い時間を同じ場所で過ごすため、その場所が電磁波にさらされていれば、何時間も電磁波を浴びることになります。それが毎日ともなれば体に変化を起こしても不思議はありません。
最近は、30代で若くして乳がんになる方が増えています。そのような方では、20代、早い方は10代から、寝室にテレビがある方が多いというリサーチがあります。若くして乳がんになった患者さん11人を調べたところ、9人がベッドの隣にテレビを置いていました。一人は電気カーペットで寝ており、もう一人は電気系統を置いてあるガレージの真上に寝ていました。若くして乳がんになった方々11人すべての人が睡眠時に電磁波にさらされていました。他の事例では、2階の寝室で寝ていた方に発生したガンの発生部位が、ちょうど1階の天井の配線がクロスするところと一致していた、という報告もあります。寝室は概して狭く、乳がんの人のテレビとの距離は、1m以内であることが多いというリサーチもあります。テレビなどは、スイッチを切っても微弱な電流が流れており、コンセントを抜かないと電磁波は止まりません。電磁波の影響を大きく受けた人がかかるガンの種類は、甲状腺、乳房、子宮、前立腺といったホルモン系であることもわかっています。
チェルノブイリの瓦礫作業を紙マスク一枚で行っていた作業員の映像がテレビで流されたことがありました。紙マスクのみ支給され、それで十分であると思っているようでした。放射線に対する無知が怖いように、電磁波の怖さも、もっと知っておいてよいでしょう。少なくとも、寝室にはテレビなどの電化製品は、置かないか、コンセントをまめに抜くようにしたほうが良いようです。
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歯の移動について 2009年9月

今月の話題は歯の移動についてです。歯が移動する時、歯は骨の中を動いていきます。この場合の骨は骨髄(海綿骨)のことを指します。海綿骨がないと歯は移動できません。骨の周りの硬い部分(皮質骨)は移動には使えません。したがって、矯正歯科治療で歯を移動するときには移動の途中と、移動先に海綿骨が十分にあるかどうかが重要です。先天的に下顎第2小臼歯がない方の場合、補綴処置を避けるために大臼歯を前方へ移動させる計画を立てます。しかし、大臼歯の幅は大きいため、大臼歯を小臼歯の生えていた狭い場所に移動させることは大変困難です。海綿骨の幅が少ないからです。幅の大きな大臼歯はつかえてそのままでは移動できません。年代が若い方であれば、海綿骨を作りながら(拡げながら)移動することが多少可能です。しかし、骨を作りながらですので、移動には時間がかかります。第1大臼歯と、第1小臼歯より前方の歯を一塊にして、互いに引き寄せますが、骨の抵抗が強いため、8歯対2歯の綱引きであるのにもかかわらず、第1小臼歯より前方の8歯すべてが、抜歯スペース分後方へ移動してしまうことさえあります。
隙間のない場合など、抜歯してスペースを作り、矯正治療をすることを矯正歯科では良く行います。(山下矯正では少ないです。)抜歯と同時に、骨は治ろうとする機転を開始し、抜歯された部位に骨が作られ始めます。骨化が進むと、歯の移動に骨の抵抗が加わります。最もスムースに移動できるのは抜歯後約4週間までです。この期間をいかに有効に使うかが、矯正治療を成功させるポイントです。矯正治療で抜歯して治療をする場合、最近の方法は矯正のバネを先に装着しておいてそれから抜歯します。これは摩擦のない矯正装置の開発があったことでさらに有効となりました。抜歯と同時に矯正力がかかるため移動がとても効率的に行われます。ロスタイムがなくなります。反面、抜歯のときに、すでにバネが装着されているため、抜歯操作は多少不自由になります。抜歯後の来院が伸びてしまったときのように、抜歯して放置されたまま時間が経過すると、骨は瓢箪状にくびれてきます。海綿骨がほとんどなくなり、歯が移動できなくなります。抜歯スペースの閉鎖も不可能になります。
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低髄液圧症候群  2009年9月

今月の話題は低髄液圧症候群です。脳の周りを埋める液が髄液ですが、この髄液の圧力が何らかの原因で低下してしまう(髄液が漏れてしまう)と様々な症状が起きます。代表的な症状として、@頸部の痛みA全身の倦怠感B起立性の頭痛C背部の痛みD頭重感E集中力の低下F視力障害GめまいH吐き気I聴力の障害J物忘れK顎関節症などがあります。
健康な成人の場合、髄液は150〜200mlで、1日に約500ml生産されています。髄液は側脳室、第3脳室、第4脳室の脈絡叢で作られ、脳、脊髄を循環し、クモ膜顆粒から排出されます。脳は髄液に浮かんでいるのが正常です。髄液に浮かんでいる脳は神経血管で頭蓋骨につながっています。髄液が漏れて過剰に減少すると、寝ているときは良いのですが、立ち上がった時に脳が浮いていられず沈んでしまい、神経血管が引っ張られ、強い頭痛や吐き気、さまざまな症状を発生します。
髄液の検査で髄液を採取すると、一時的に髄液圧が低下し、これが原因で、頭痛などの症状が起きます。穿刺の針穴は自然にふさがり、症状も消えます。これが従来の知見でした。最近の研究では、特発性低髄液圧症候群として、日常の中での事故や外傷が原因で髄液が漏れている場合があることがわかりました。@交通事故(むちうち)AスポーツB出産が主な原因でした。統計的には15%ほどが原因不明でした。
診断は過去の経緯、脳MRI、RI脳槽・脊髄液腔シンチグラフィなどにより診断します。治療は本人の静脈血を脊髄硬膜外に注入するブラッドパッチ法(脊髄硬膜外自家血注入療法)が効果的です。
低髄液圧症候群の方では顎関節症を起こして治療中の人も多くいます。低髄液圧症候群の治療後、自然に顎関節症も治ってしまうことも多く、髄液の減少が三叉神経の障害を起こし、咬筋のアンバランスが顎関節症を起こしていたものと考えられます。
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仙腸関節と噛み合わせ 2007年5月

 今月の話題は腰骨(仙腸関節)とかみ合わせです。今まで快調に使っていた詰め物が取れて、詰めてもらってもすぐまた取れてしまうといったことはないでしょうか?歯が痛いので歯医者さんに行って診てもらっても虫歯ではなく、なんともありませんよと言われたことはないでしょうか?そんなときに一番疑われるのはかみ合わせの変化があった場合です。そのごく近い頃に尻餅をついたり、転んだり、ジェットコースターに乗ったり、中腰で無理な姿勢を続けたりしたことがあればたぶんそれが原因になっていると考えられます。
 尻餅をついたり、転んだり、ジェットコースターに乗ったり、中腰で無理をすると、骨盤を形作っている仙骨(骨盤を形作る真後ろの骨)と、腸骨(骨盤の左右の骨)の間にある仙腸関節で、仙骨と腸骨の接触状態がずれてしまうことがあります。ずれ方には2種類あり、仙骨に対して腸骨が前方方向にずれるタイプと、仙骨に対して後方にずれるタイプがあります。外傷性の変化のときは、ほとんどの場合、仙骨に対して腸骨が後方に回転しながらずれます。仙腸関節はねじを締めるようにきゅっと関節間の隙間がなくなるように食い込んでいきます。腸骨が仙骨に対して後方へ食い込んでしまうと食い込んだ側と食い込んでいない側で、骨盤の高さが左右で違ってきます。股関節の高さも変わるため、見かけの足の長さも左右で違ってきます。そのため身体が傾き、顎関節にかかる力も左右で違ってしまい、下あごの噛む位置が変わっていきます。同時に骨盤と体幹の向いている角度も変わるため、身体のねじれができます。これも下あごの位置を変えるため、かみ合わせは正常な位置からずれていきます。正常な位置で作られていた歯並びはいっきょにうまく噛めない歯並びになり、歯が浮くといった感じを持つこともあります。カチカチしたときの音も違っています。あごの動き方も変わるため、噛んだときにそこばかり当たってしまうところができて、痛みの原因となったり、詰め物のはずれる原因となります。噛むたびに特定のところが当たり、虫歯や特定部位の歯周病を作ることもあります。
 身体の状態が元に戻っていないときは、歯のあたり方が違うため、詰め物を詰めなおしてもまたすぐ取れてしまいます。身体の調子が悪いときの噛み合わせは本当のよい噛みあわせではなく、安定した噛み合わせではありません。歯科治療は、身体の調子のよいときにするのがベストです。
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